中国からの訪日客数は低調なまま
一方、観光庁は2月に入り、イスラム教徒の受け入れ体制を整備するためのセミナーを開催するなど、イスラム教徒の対応に力を入れ始めている。今年は日・ASEAN(東南アジア諸国連合)友好協力40周年という記念の年を迎える。この機会をとらえ、イスラム教徒が多く、人口が大きいマレーシアやインドネシアなどから旅行者を取り込もうとの構えだ。
ただ、1000万人の目標を達成するには、さまざまな問題がたちはだかる。まず中国人の動向だ。12年夏以降、尖閣問題で日中関係は悪化しており、中国からの訪日客数は低調なままだ。直近の12年12月の中国人訪日客数は前年同期比34.2%減の5万2400人。国・地域別の訪日数では例年、中国人は韓国人に次いで2番目に大きいが、2012年の年間訪日数は143万人にとどまり、台湾(146万6700人)を下回った。最近では中国海軍の艦船が日本の海上自衛隊の護衛艦などに火器管制レーダーを照射したという深刻な事態が生じており、日中間の緊張関係の高まりは訪日数のさらなる減少につながりかねない。
また、最大の顧客である韓国人の動向も見通せない。韓国では他国に比べて原発事故に対する風評被害が大きい。2012年秋以降から徐々に持ち直しているとはいえ、まだ震災前のレベルまで回復しておらず、懸念材料は少なくないのが現状だ。