中国海軍にレーダー照射された自衛艦の位置について、民主党の原口一博元総務相が国会で、衛星画像表示の地球儀ソフト「グーグルアース」を見れば分かると発言したことが物議を醸している。
原口一博氏の発言は、2013年2月7日の衆院予算委で安倍晋三首相らを追及した際に飛び出した。
ITリテラシーがないと次々に揶揄
原口氏は、政府内でレーダー照射の情報伝達が遅れたことを批判し、照射が起きた自衛隊艦船の場所についてただした。答弁に立った小野寺五典防衛相は、海自部隊の運用上、様々な問題があり、ぎりぎりの線でしか話せないとしたうえで、「東シナ海の公海上、日中中間線の日本側」だと明かした。
これに対し、原口氏は、国際的な情報戦の中では、相手国が場所などのディテールを言ってきたときは逆に、日本が何か不都合なことを隠したと言われると指摘した。そして、次のように、政府側の答弁内容に疑問を呈した。
「もう相手に場所分かってるじゃないですか。だって、レーダー照射までしてるわけですよ。グーグルアースか何かを見れば、分かりますよ。どこに日本の艦船がいたか。で、隠さなくていいことまで隠し、出さなきゃいけないことを出さない」
この発言が2ちゃんねるで紹介されると、ITリテラシーがないと次々に揶揄する声が上がった。
「えっググルアースてリアルタイムなの?」「偵察衛星はもう必要ないんだな!凄い時代だw」…
原口氏は偵察衛星などと勘違いしたのではないか、との声も上がった。2ちゃんでは、スレッドが次々に立つ祭り状態になり、「グーグルアースの隠しAPIの存在を公表してしまったか...」などとからかう向きまであったほどだ。
無線による自動船舶識別装置でも無理?
リアルタイムに船の動きが分かるソフトとしては、無線による自動船舶識別装置(AIS)を使った「ライブ船舶マップ」などがある。グーグルアース上でもリアルタイムで船舶の位置を確認できるが、原口一博氏はそのことを指していたとも言い難いようだ。
海上自衛隊の広報室では、こう言う。
「確かに、護衛艦がAISの送信をオンにすれば、リアルタイムで位置確認ができます。しかし、受信だけして送信しないことも多く、送信するのは、沿岸地域などで船の往来が多いといった危険なケースです。ひょっとしたらAISのことを言っていたのかとも思いましたが、場所が日中中間線付近の海上なので、違うのではないかと思いますよ」
発言が何を意味するかについては、その意図が分からないとして、原口氏側に聞いてほしいとのことだった。
原口氏の発言は、一部メディアでも報じられ、「レーダー照射された緯度経度をGoogle Earthで確認すれば場所は分かる」と解釈する向きもあった。言い換えれば、中国側はレーダー照射を通じて日本の艦船の緯度経度をつかんだので、それをグーグルアース上で見れば、日中中間線の日本側のどこの場所かが中国側に分かってしまう、ということらしい。ただ、この場合グーグルアースを使うまでもなく中国側は把握していたと考えるのが普通だ。
原口氏の事務所に取材すると、本人が事務所に来ないので、まだ確認できないとして、話が聞けなかった。なお、原口氏は2013年2月8日夕現在もツイッターで発言について触れておらず、沈黙したままだ。