環境省は2013年2月8日、大気汚染物質の微粒子上物質「PM2.5」について緊急行動計画を公表した。大気汚染の深刻な中国から大量に飛来し、日本国内の濃度も上昇するとの懸念が出ているためだ。
超微粒子のPM2.5は、人体に入り呼吸器系や循環器系の疾患を引きおこす危険性も指摘されている。市販のマスクでは防げないというが、個人ではどんな対策が取れるのだろうか。
防塵マスク「N95タイプ」なら大丈夫
PM2.5は2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質の総称。中国から飛来していると見られるものは、スギ花粉の1/100ほどの大きさの硫黄酸化物と窒素酸化物で、非常に細かいため、肺胞の奥や血管にまで入り込みやすい。
環境省では「ただちに健康被害が出るわけではない」としているが、水に溶け辛い性質もあり、内蔵に長く留まってぜんそくや肺がんといった呼吸器系の疾患や、心臓など循環器系の疾患をも引きおこす可能性があると指摘されている。2013年2月8日放送の「朝ズバッ!」(TBS)で東京農工大の畠山史郎教授が話したところによると、高度経済成長期の日本の公害病、四日市ぜんそくの原因とされる「硫酸ミスト」と同じ影響があるという。
ウィルスよりも小さいため、通常ドラッグストア等で入手できるマスクでは防ぐことが難しいそうだ。
では、個人としてはどんな対策が取れるのだろうか。駐北京日本大使館が2013年2月6日におこなった在中日本人向けの説明会では、(1)PM2.5の数値が高い時はなるべく外出を避けて屋内にいる、(2)「N95タイプ」のマスクを着用することが勧められていた。
「N95タイプ」とは、防塵用のマスクで、0.3マイクロメートルの粒子を95%以上防ぐとされる。
「N95タイプ」はホームセンターなどで入手できる。ただ、PM2.5の影響を受けやすい福岡市内では、すでに売り切れているところもあるという。ネット通販の楽天でも、売り切れで次回入荷予定が書かれているショップもいくつか見られた。
一方、パナソニックやシャープ、ダイキンといった日本製の空気清浄機が、中国での売り上げを伸ばしていると8日付の日本経済新聞朝刊も伝えている。汚染物質を除去する最新技術が評価されているそうだ。
3月から、6月頃にかけて中国から黄砂と共に大量のPM2.5が飛来する恐れ
気象予報士の森朗氏は、西高東低の気圧配置が緩む3月から、6月頃にかけて中国から黄砂と共に大量のPM2.5が飛来する恐れがあると8日の「スッキリ!!」(日テレ)で話した。首都圏にも影響が出るかもしれないという。
環境省ではこうしたことへの「緊急行動計画」として、観測網を拡大するほか、情報提供を増やし、環境基準値を超える場合に注意報や警報に当たる情報を出すことも検討すると8日に発表した。すでに東京都や神奈川県をはじめとする全国の自治体では測定機器の増設を進めていて、役所のホームページで観測データを公開しているところもある。
たとえば、鳥取県では国の環境基準(1日平均で1立方メートルあたり35マイクロ・グラム)を超えるなど高濃度が予測される場合、注意情報をメールで送ることを来週にも開始する。また、リアルタイムの数値表示システムの導入を、春頃をめどに進めている。
こうした自治体からの情報をもとに、数値が高い日は外出を控えるなどの自衛策をとることも、重要になってきそうだ。