東京都の猪瀬直樹知事が、降雪予想を相次いで外してしまった気象庁にツイッターでかみついている。特に、大雪に備えて出動したことが「空振り」に終わったことを問題視しているようで、再び予想が外れた場合は「責任を追及します。狼少年は許さない」と、穏やかではない。
気象庁の降雪予報をめぐっては、2013年1月14日には「積もる可能性は低い」とみていたにも関わらず大雪が降り、首都圏の交通機関には大きな影響が出た。この反省からか、2月6日については、東京23区で正午の時点で10センチの積雪があると予測していた。だが、実際には早朝に多少の雪は降ったものの、ほとんど積もることはなかった。交通機関への影響も、多少の遅れが出た程度だった。
「科学なのに責任に対する心理に支配され歪んでいる」???
この状況に憤ったが猪瀬知事で、2月7日未明、
「天気予報は科学なのに責任に対する心理に支配され歪んでいる。成人の日に外れたので過剰に積雪量を2度も見積もった。多めに先読みすれば責任逃れができるとする姿勢がもし3度目にあったら責任を追及します。狼少年は許さない。気象庁の自己保身のためにどれだけの組織、人が迷惑を与えられたか」
と気象庁を非難した。気象庁は、国土交通省の中の一機関で、東京都が直接何らかの指示をすることはできない。過去の新聞記事で報じられている限りでは、東京都が気象庁に何らかの抗議を行った事例は確認できない。
そのため、東京都がどのような手段で「責任を追及」するかは明らかではないが、この怒りの背景には、自らの試みが徒労に終わったこともありそうだ。
猪瀬知事が2月5日深夜から6日朝にかけて、都民のツイートを続々とリツイート(RT、転送)。RTされたツイートは
「猪瀬知事!!江東区はポツポツです!!」
「杉並区北部は一旦雨が降りましたが今は何も降っておりません!」
といった都内の天候を知らせるもので、
「猪瀬さんがRTいっぱいしてるのを眺めていると下水道局の降雨レーダーの画像と一緒でその優秀さがよくわかる」
といった感想も出ていた。
猪瀬知事も
「各エリアの天気の現況は、震災のときの情報収集に役立つので今回RTしてみました。実験になるかもしれないので。ただし僕個人はそろそろ休みます。今後都庁として個人発信の組織的な情報分析を考えたい」
と意欲を見せていただけに、失望も大きかったようだ。
ダイヤ乱れをネタに著書を宣伝
なお、羽鳥光彦気象庁長官は、大雪直後の1月17日に行われた定例会見の場で、
「大雪についての予測が十分ではなかったことについては真摯に受け止めている」
と陳謝。今後の方針については
「積雪となった場合、社会的影響は極めて大きいので、必ずしも可能性は高くない場合でも、積雪のおそれがある状況であれば、その情報の発表方法について工夫するなどの検討を早急に進めていきたい」
と話し、できるだけ注意を呼びかける方向で検討しているとみられる。
また、2月7日午前には猪瀬知事は
「きのうは雪の影響でダイヤが乱れ、いつにも増して過密になった路線もありました」
と前置きした上で、
「首都圏のサラリーマンはなぜ郊外から満員電車で通勤しなければならなくなったのか。『土地の神話』(小学館文庫)では「東京」の都市開発の起源を徹底的に調べ上げました」
と、アマゾンへのリンクを貼って著書を宣伝。ツイッター上では、気象庁批判そのものが妥当ではない上に、批判に乗じて著書を宣伝しているとの疑問も出ている。
なお、著書は、アマゾンでは
「関東大震災後、東京という街がいかにしてでき上がっていたかを検証する『ミカドの肖像』の続編ともいえる近代日本論」
などと紹介されている。