安倍晋三内閣発足後、初の予算となる2013年度当初予算案が決まった。金融緩和、財政出動、成長戦略を3本の矢とする「アベノミクス」は、総選挙中に安倍氏が建設国債の日銀引き受けに言及(その後「市場を通じて」と釈明)したこともあり、財政規律の緩みが懸念されたが、公共事業や防衛費を増やす一方、民主党政権で常態だった借金(新規国債発行額)が税収を上回る異常事態を回避した。
「引き締まった予算」(麻生太郎財務相)の演出に成功した形だが、内実はあの手この手の「マジックを駆使」(市場関係者)したとの評が多い。
消費税率引き上げのため「少々の無理は飲む」
当初予算案は一般会計総額92兆6115億円と、前年度当初予算(実質92兆9181億円)を下回り、7年ぶりに減額。歳入では税収を43兆960億円、新規国債発行額(新たな借金)を42兆8510億円とし、4年ぶりに逆転を解消した。その「号砲」は麻生太郎副総理・財務相の1月25日の閣議後会見。「新規国債発行については、税収を上回る形での予算編成は避けたい」と語った。実はこれより前の1月中旬、財務省幹部は麻生氏に、「国債発行が税収を上回るのでは、国際会議で笑われます」と進言していた。首相経験者の副総理として国際的評価を気にする麻生氏のプライドをくすぐるささやきだった。首相官邸も日銀引き受け論議もあってバラマキ批判を懸念していた。
財務省にとっては、2014年4月の消費税率引き上げ(5%を8%に)という至上命令があるため、今回の経済対策と予算編成は「少々の無理は飲む」(幹部)というのが基本スタンスだった。とはいえ、緊急経済対策に伴う2012年度補正予算案で10兆円超という国費投入を強いられたことから、2013年度編成では財政規律維持をアピールしたかった。こうして、麻生氏のイニシアチブの形で「税収と国債発行の逆転」という新年度編成の最大の課題をなんとかクリアした。