「ゆめぴりか」、「ななつぼし」を知ってますか――。いずれも北海道産の「ブランド米」だ。
このところ、北海道米の地位がぐんぐん上昇している。すでにコメの収穫量(主食用)では日本一となっているが、最近は「おいしさ」でも他の「ブランド米」に負けていない。「新潟産コシヒカリ」の地位をも脅かす存在になりつつある。
「ゆめぴりか」テレビCMで知名度アップ
農林水産省が2013年1月11日に発表した「米に関するマンスリーレポート」によると、2012年産水稲の都道府県別収穫量(主食用)で、北海道産は62万1800トンと第1位。2位の新潟産(59万8700トン)に2万3100トンの差をつけた。3位は秋田県の45万400トン。いまや北海道は日本一の米どころ、というわけだ。
もっとも、価格では「新潟産コシヒカリ」には敵わない。新潟産、なかでも高級ブランドの「魚沼産コシヒカリ」の12年米は、出荷者と卸売業者との相対取引価格で、玄米60キログラムあたり2万4046円(12年11月速報ベース)と、飛び抜けて高値が付いている。
新潟産コシヒカリ(一般)でも1万8523円と、同じコシヒカリでも富山産や福島産(会津)、栃木産などと比べて1430円~1550円も高い。
北海道産は「きらら397」が1万5351円、「ななつぼし」が1万5414円と割安。しかし、11年米(11年11月の取引価格)と比べると、ともに10%程度値上がりした。
農林水産省生産局は、「12年米の米価は、前年の原発事故の影響が残ったこともあり、春以降にスポット価格(卸業者間の取引)が高めに推移しました。そのため、北海道産を含め全体的に米価は上昇しました」と説明。新潟産コシヒカリは「高止まりしている」という。
一方、小売価格(12年11月時点)でみると、新潟産コシヒカリ(一般)は5キログラム袋の販売で2331円。北海道米の「きらら397」は2081円で販売されているが、新潟産コシヒカリが前年よりわずかに値下がりしているのに対して、北海道米は1割程度値上がりしている。
しかも、青森米の「つがるロマン」や山形米の「はえぬき」といったブランド米よりも高値を付けた。
おいしさ「特A」北海道米から2品種
ここ数年、北海道米が注目されたのは、めずらしさや割安感からだけではない。「おいしさ」が高まっていることもある。
評判なのが北海道米の優良品種として採用された極良食味米の「ゆめぴりか」。09年度に市販を開始。同年は収穫量が少ないこともあったが発売後、数週間で完売した、北海道「自慢」のコメだ。
11年からは首都圏などでテレビCMがスタート。知名度がアップした。小売価格も2500円前後と新潟産コシヒカリと互角以上の評価を得ている。
その「ゆめぴりか」は、日本穀物検定協会の2011年の「食味ランキング」で、初登場で最高ランクの「特A」を獲得した。「ななつぼし」も10年、11年と2年連続で「特A」を獲得。どうやら、北海道米は「おいしさ」でも新潟産コシヒカリにも引けをとらない存在になりつつあるようだ。
食味ランキングは同協会が1971年から毎年実施しており、専門家が実際に試食して、コメの外観や味、粘りなど5項目の総合評価で決める。11年米は192の産地品種から、26が「特A」を獲得。そのうちの2品種が北海道米だったことになる。
もちろん、新潟県からも魚沼産や岩船産、佐渡産、中越産のコシヒカリが「特A」を獲得した。
農林水産省生産局は、「北海道産を含め、どの生産地もそうですが、品種改良を重ねるなど、おいしい米をつくる努力をしています。その結果が、食味評価につながっているのだと思います」と話している。
一方の新潟県も、「他の産地も品種改良でよいお米をつくっているので、うかうかしていられないことは認識しています。現在、2017年の市販を目指してコシヒカリの晩生種(収穫の時期の遅い品種)を育成中です」(農林水産部)と、余念がない。