再び「笹子トンネル事故」を起こさない! 国交省「防災・安全交付金」を新設、5500億円要求する動き

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   老朽化した道路や橋、港湾などの社会資本(インフラ)を総点検し、補修・更新を徹底しようという国ぐるみの活動が急速に動き出している。国土交通省は2013年1月21日、太田昭宏国交相を議長とする「社会資本の老朽化対策会議」を急きょ設置、省内で横断的に老朽化対策に対応する体制を整えた。

   12年12月に発生した中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落を受けた動きだが、無駄な公共事業の復活につながらないか、と懸念する向きもある。

お金がなくて補修できない地方自治体を支援

   老朽化対策会議では、施設の特性に応じて点検が実施されるよう、点検対象や頻度などに関わる基準やマニュアルを見直し、国や地方自治体の間にあるばらつきを改善する。また各インフラの老朽化に関する情報をデータベース化し、広く関係者で共有する方針だ。

   太田国交相は同省の主要幹部を集めた対策会議の初会合の冒頭で、「老朽化対策は急がなくてはならない課題だ」と力説、老朽化対策に集中して対応するよう強く指示した。

   国交省はまた、老朽化対策の徹底を図るため、地方自治体を支援する新たな「防災・安全交付金」を設ける。全国のインフラの点検・補修を進めるには地方自治体の役割が不可欠だ。

   例えば、一般道(総延長約126万キロ)で見た場合、都道府県道と市町村道の割合は約95%に及び、国管理の道路はほんの一部に過ぎない。地方道を管理するのは自治体の役目だが、いずれも厳しい財政難に直面している。

   防災・安全交付金は使い道をインフラの老朽化対策に限定することで、自治体管理のインフラの点検や補修・更新作業を促す狙いがある。国交省は交付金の新設を2012年度補正予算の目玉と位置づけており、要望額は約5500億円。

老朽化対策を口実に公共事業肥大化の懸念

   国交省によれば、全国の道路橋(15メートル以上)のうち、建設後50年以上を経過したものは、2011年度では約9%に過ぎなかった。しかし、10年後は約28%と4分の1を上回り、20年後は約53%と半分を超える。港湾岸壁などもほぼ同じような状況だ。こうした実態を放置しておけば、笹子トンネルのような重大事故が再発しかねない。国交省が「国民の命を守ることが第一」(太田国交相)として対策を強化し、必要な国費を投入するのは必要な対応だ。

   ただ、インフラの老朽化対策が口実にされ、いたずらに公共事業が増大しかねないという懸念はぬぐいきれない。景気対策の手段として公共事業を利用し、国の財政悪化を招いたこれまでの過ちがそうした懸念を強めている。本当に必要な公共事業が実施されるのだろうか。厳しい監視の目がいっそう必要となってくる。

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