リーマンショック以降、自動車の世界では「ダウンサイジング」という言葉が盛んに使われるようになった。売れ筋がコンパクトカーや軽自動車へ移っていくことを示す言葉で、実際、2012年の新車販売に占める軽自動車の割合は36・8%にまで上昇した。
ただ、小さい車が勢力を広げる一方で、200万円を超える中型車、大型車にも勢いのある商品が出てきている。ディーラーからは「小さい車に飽き足らないユーザー層は確実にいる。大きい車でもインパクトのある技術を盛り込んだ商品は売れる」という声が聞かれる。
マツダのCX-5とアテンザも当初予定を上回る
トヨタ自動車が2012年末に発表した新型クラウンは1月15日までに1万9千台の受注を獲得した。当面の販売目標を引き上げるなど、勢いづいている。特徴は従来のイメージを覆す大胆な外観デザインと、ハイブリッド(HV)だ。
この2つを武器に輸入車へと流れる一方だったユーザーを取り戻すことを目指している。新年早々の発表会では「ベンツやBMWオーナーも来店している。これまでになく関心は高い」と首都圏のディーラーは話す。
マツダのCX-5とアテンザはディーゼルエンジンを売りにする。いずれも当初予定を上回る売れ行きとなり、デミオがコンパクトカー戦線で苦戦するなかで新たな収益の支えになっている。ディーラーは燃費以上に、トルクの太さを活かした力強い加速がユーザーの支持につながった、と見ている。
スバルのフォレスターも月販目標の4倍
ディーゼルモデルはBMWの3シリーズなどでも人気が高まっており、以前の悪いイメージから転じて新たなアピール技術として見直されつつある。
三菱自動車が12年末に発表したプラグインHV、アウトランダーPHEVは好調な出足となった。発表直前にリコールの不適切な対応が発覚し報道発表会を中止したが、事前予約と合わせて想定以上の注文が集まった。ディーラーは「自信をもって勧められる商品。反響がここまで大きいとは」と驚く。三菱ユーザーのほか、輸入車ユーザーの乗り換えもあるという。
また、スバルのフォレスターも11月の発売から1カ月で8千台を超える受注を集めた。月販目標2千台の4倍に当たる。
パワートレーンの効率性がカギ
これらのヒット車種に共通するのは、パワートレーン(動力と伝達系)の目に見える進化だ。クラウンHVは旧型の高額なパワー系から、燃費・パワー・コストをバランスさせたモデルに生まれ変わった。マツダのディーゼルや三菱の純粋電気自動車(EV)とHVを組み合わせたPHEVも次代を担う原動機として開発された。スバルも直噴やCVTを新型車のパワートレーンに順次採用している。
メルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズのボンネットの下に収まるのは今や4気筒エンジンである。このことにも象徴されるように、昔ながらの大排気量の中型車、大型車が生き残るのは難しくなった。ただし、パワートレーンの効率性と運転の面白みが両立すれば、車体サイズが大きくてもユーザーに受け入れられる余地はあるようだ。