「AKB48について、今、緊急の情報が入りました」
上ずった声でスタッフが駆け込んで来た。2013年2月1日、東京・六本木の映画館「TOHOシネマズ」で行われたドキュメンタリー映画「DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?」初回舞台あいさつの10分前だ。
「なんだ?」
「もしかして、坊主刈りにした峯岸みなみが来るとか……」
取材に訪れていた100人近い報道陣が首をかしげるところに、1枚のペーパーが配られた。
「本編映像の中で、AKB48チームK板野友美がグループを卒業することになった旨、発表しておりますことをご報告申し上げます」
「なんでともが卒業なんだよ……!」
「板野卒業!?」たちまち記者たちは大慌てに。我先に会社に電話をかけ始める。詳細を尋ねられたスタッフも、
「トップシークレットだったもので……私たちもなんとも……」
卒業は、同映画の中で板野さんが卒業の意向を明らかにする形で明らかにされた。試写会などではそのシーンはカットされていた模様で、この日の初回上映が、文字通りの「初発表」となった。
舞台あいさつは、初回上映が終わったばかりのTOHOシネマズで行われた。会場にはまだ観客が残ったまま。映画の中で突然の発表を知って戸惑う様子のファンたちがいた。
「いだの~、どういうことだよ……!」
1人の若い男性ファンが、嗚咽交じりに喚いている。
「普通に感動してたのに……なんでともが卒業なんだよ……!」
舞台あいさつの進行予定も急遽変更され、まず板野さんが1人でステージに上がってきた。少し声はうるんでいたが、その表情は晴れ晴れとしたものだった。
「AKBは夢を叶えるための場所なので、(ブレイクしてからは)卒業はずっと考えていました。本当は春のコンサートで発表するつもりだったんですが、インタビューを受けているうちに卒業という気持ちが強くなってきて。秋元(康)先生も、『本音で言ってしまったというのが板野らしいんじゃない』と」