北朝鮮が3回目の核実験に踏み切ることが確実視されるなか、米朝の緊迫度がこれまでになく高まっている。国営朝鮮中央通信は対米批判をエスカレートする一方、米国も核実験を行った際には「重大な行動をとる」と警告。過去に例をみない「瀬戸際外交」ぶりが浮き彫りになっている。
朝鮮中央通信が連日過激な記事を配信
北朝鮮が2012年12月、人工衛星と称する事実上の弾道ミサイルを打ち上げたことに対して国連安保理が制裁決議を行った。打ち上げに関与した朝鮮宇宙空間技術委員会など6団体、4人に在外資産凍結や渡航禁止を科すというものだ。これに対して北朝鮮側は核実験で対抗する構えだ。
通常は17時から放送を開始する朝鮮中央テレビは、13年1月28日から3日連続で5時間繰り上げて正午から放送を開始。核実験を行った際に、すぐ対応できるようにしているとの見方も出ている。
国営朝鮮中央通信は、制裁決議を主導したとされる米国に対して、これまでになく強い調子で非難する記事を相次いで配信している。例えば1月28日に「米国との全面対決戦に奮い立つ鉄石の信念と意思」と題して配信された記事では、朝鮮人民軍幹部の声が複数紹介されており、中には
「ヤンキーの奴らよ、一度対戦してみたいなら対戦してみよう」
というものもある。
また、同日に「米国は残酷な代価を払うことになるだろう」と題して配信された論評記事では、
「われわれには自主権守護のための強力な物理的対応措置を講じること以外に他の選択があり得なくなった」
「反米闘争の新たな段階であるこの全面対決戦で、われわれが引き続き打ち上げる衛星と長距離ロケット、われわれが行う高い水準の核実験は徹頭徹尾、わが人民の不倶戴天の敵である米帝を狙うであろう」
と、宣戦布告に近い内容になっている。
1993~94年の危機ではギリギリで先制攻撃回避
一連の北朝鮮の対応に対して、米国側も強い言葉で「応戦」する事態になっている。米国務省のヌランド報道官は、同日(米国東部時間)の会見で、
「北朝鮮の声明は不必要に挑発的で、いかなる核実験も国連安保理決議の重大な違反になる。決議第2087号で言及しているとおり、仮に核実験が行われた場合、我々は重要な行動をとる」
「(北朝鮮の声明は)北朝鮮国民の生活を改善させるためには何の役にも立たない」
と発言している。この「決議第2087号」は、前出の制裁決議のことを指す。その中には、
「北朝鮮による更なる発射又は核実験の場合には重要な行動をとる決意を表明する」
という文言もある。
この「重要な行動」の内容は明らかではないが、核関連施設への先制攻撃を指すとの見方もある。米国は、過去にも同様の対応を検討した経緯があるからだ。
北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)脱退を宣言したことに端を発する1993~94年の危機では、当時のクリントン政権が寧辺の核施設へのピンポイント爆撃を軸とする先制攻撃計画を本格的に検討していた。
計画の実行直前にカーター元大統領が訪朝して金日成主席と会談したことで、ぎりぎりで危機が回避されたという経緯がある。
北朝鮮の3度目の核実験は、2013年2月10日前後に行われるとの見方が有力だ。