豆電球を点けて寝る人は「デブになる」? 光と体のメカニズムを奈良県立医大が解明

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   就寝するときに部屋が真っ暗だと眠れない、などとして蛍光灯の豆電球を点ける人もいるが、その豆電球の明かりが肥満につながる可能性がある。そんな調査結果を2013年1月に奈良県立医大の研究者が発表した。

   光が体の生体リズムに影響を及ぼすためで、食欲が強くなったり、体に好影響を与えるホルモンのメラトニンが出なくなったりして、中性脂肪が高くなる「脂質異常症」を引き起こす可能性もあるのだという。肥満には体質や食生活などさまざまな原因があるとされているが、睡眠時の生活習慣も関心を呼ぶことになりそうだ。

アメリカの有名科学誌でも調査結果が紹介された

   この研究をした奈良県立医科大学地域健康医学講座の特任助教・大林賢史さんによれば、夜に光を浴びせることによって体重が増えることは動物実験で明らかにされていたが、人間を使って調査をしたのは今回が初めて。大林さんたち研究グループの成果はアメリカの有名な科学誌の電子版「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」と、米国内分泌学会の機関誌「Endocrine News」の13年1月号でも紹介された。

   今回の調査は10年9月から12年4月まで、奈良県内の高齢者528人を対象に実施され、ほぼ真っ暗な照度3ルクス未満の部屋で寝ている人と、9ルクスという豆電球を点けた程度の明るさで寝ている人を比べたところ、肥満症や脂質異常症の割合が9ルクスが3ルクスの1.9倍にもなったという。

   なぜ豆電球ほどの光で「肥満」になる可能性があるのか。大林さんによれば、光は体の生体リズムに強く影響を及ぼすことが分かっていて、就寝中に部屋が明るければ熟睡が妨げられ寝不足になり、食欲を促すホルモンが分泌される。そしてメラトニンと呼ばれるホルモンが関わってくるのだという。

メラトニンが分泌されず「脂質異常症」になることも

   メラトニンは脳の松果体から夜間に分泌されるホルモンで、生体リズムの調整や、うつ病、認知症、がん、高血圧などを予防する効果が報告されている。昼に日光を浴びればこのホルモンが出やすくなるが、就寝中に人工の光であっても浴びてしまうと分泌がなくなってしまうのだそうだ。そのため「脂質異常症」になってしまう場合があるのだという。

   大林さんたち研究グループは10年から大規模な研究「平城京スタディ」を立ち上げ、光、温熱、騒音などの住環境がどのように健康に影響しているかの調査を始めていて、今回の就寝時の光に関してもその一環として調査した。もともとの人間は昼は日の光を浴び、夜は暗闇で寝る、そんな生活パターンだったのが、現在は昼は人工光で仕事をし、夜も人工光を浴びて寝るとすれば、本来の人間が持っている生体のリズムが狂ってもおかしくはない。

「太りたくなければ夜は暗くして寝たほうがいい、という可能性が出たわけですが、根本的には生体リズムを取戻すことが重要なわけで、光が人体に与える影響については更に研究が必要だということでしょう」

と大林さんは話している。

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