アフリカ人のホームレスが増えている。難民認定を求めて日本にやってきたが、お金も住居もなく、駅などで寝泊りせざるをえないのだという。
背景には、ここ最近の難民申請者の急激な増加がある。審査期間が長引き、約3~4年ほどかかかる。このうち、就労が禁止され、公的支援も受けられない期間があり、一部の難民が貧困に陥ってしまう。
対応の追いつかない国や支援NPOらは頭を抱えている。
難民認定申請者数急増、ここ10年で最大
2013年1月21日放送のNHKニュース「おはよう日本」では、日本へ難民としてやってきたナイジェリア国籍の男性を取り上げた。男性はキリスト教徒で、イスラーム過激派の攻撃により父と弟を失い、日本へ逃れてきた。しかし、難民制度の問題で、ホームレス生活を余儀なくされている。
アフリカ系難民、特にアフリカ中西部出身の単身男性の相談は、2011年から2012年にかけて急増したとNPO法人難民支援協会は報告している。
法務省入国管理局の統計では、アフリカ諸国からの難民申請は2000年代前半はおおむね1桁台で推移していたが、06年頃から増加傾向にあり、09年にはウガンダ国籍者から46人、10年はナイジェリア国籍者から33人の申請があった。
背景として、ヨーロッパ諸国の対応の変化が指摘されている。従来、地理的に近く、言語も通じやすいヨーロッパの先進国が、アフリカ系難民の避難先だった。ところが近年、ビザの発給条件を厳しくするなど、受け入れを拒む体制を強化している。そこで「あぶれた」人々が、日本への避難を選択肢に入れるケースが相対的に増えてきたというわけだ。
さらに、ホームレスになってしまうような「緊急性の高い難民」のうち8割から9割がアフリカ系だと、難民支援協会事務局長の石川えりさんはいう。
理由には、難民申請者同士で支えあうコミュニティが比較的少ないことがあげられる。日本にやってくる難民のうち約半数を占めるミャンマー国籍者や、トルコ国籍のクルド人らは、難民同士でコミュニティを築き生活を助けあっていて、日本人弁護士らによる支援体制もある。
一方、アフリカ系の場合は一口にアフリカといっても、国や言語といった背景が非常に多様なので、まとまりにくい。その結果、日本へやってきても、サポートが十分でなく、生活に苦しむことが多いそうだ。
審査期間中は就労禁止、公的支援もわずか
また、申請者の急増と、公的支援制度の問題もある。
法務省によると、2011年の難民認定申請者数は1867人(前年比665人増)に急増し、ここ10年で最多となった。
入管はこの急増に対応するだけの人員を用意できず、現在、認定審査が約3~4年と長引いている。
その上、審査の間には一時的に、法的に働けず、公的支援も受けられない状態が生じる。審査を開始する前に2~3か月の「待機期間」があり、この期間は就労が禁止されている。現金で「保護費」が支給されるのは審査がはじまって最初の約12か月のみ。行政手続き期間中は就労許可されるものの、難民と認定されず裁判になると、再び禁止される。なお、日本の難民認定率は11年で1%以下と非常に低い。最終的に認定されなかった場合、国に帰るか、再申請も制度上は可能だ。手続き期間中に、情勢が変わって安全に帰れるようになる人や、日本で結婚するなど別のルートで在留資格を得る人も一部にはいる。
これまでは、難民支援協会など民間のNPOなどが、困難な状況にある申請者らを受け止めるセーフティネットの役割を果たしてきた。しかし、それも急増には対応できず、「限界がある」(石川さん)。
協会が提供している仮住居「シェルター」は、現在18人待ちの状態。住居のない難民申請者らの中には、日中を協会の事務所で食事をもらうなどして過ごし、事務所の閉まる夜になると、外へ寝にいく生活を送っている人もいるという。
難民制度に関しては、さまざまな問題を総合的にみる必要があるが、今もっとも切実なものは、「どうやって生きていくか」と石川さんは話す。より適切な支援のあり方をさぐり、現場の声を政策担当者に届けていきたい考えだ。