これも「アベノミクス効果」なのか――。為替相場で円安ドル高が続くなか、国内の金価格が急騰している。
安倍政権が打ち出した「2%の物価上昇目標」を決めた日本銀行の金融政策決定会合の初日にあたった2013年1月21日には、現物の小売価格が1グラムあたり5146円に上昇。じつに32年ぶりの高値を付けたのだ。
「1ドル1円動くと、金価格は約50円動く」
貴金属大手の田中貴金属工業によると、2012年の国内の金価格(年平均)は、前年の4060円を261円上回る、1グラムあたり4321円だった。
12年2月以降、欧州財政問題に対する不安感でユーロ安ドル高が進行したことや、中国の景気減速による宝飾需要の弱まりで値を下げ、6月には平均3975円の最安値をつけた。
ところが、9月に米国で量的緩和第3弾(QE3)の実施が発表されると値を戻しはじめ、減税失効と歳出の強制削減が重なる、いわゆる「財政の崖」への懸念に加えて、日本国内では12月の衆院選後の「大胆な金融緩和」への期待感からくる円高修正で、12月の平均価格は最高値の4567円まで上昇した。
2013年は、その勢いが年始から止まらない。12年12月21日に1グラム4731円だった金価格は、1月21日には5146円を付けた。わずか1か月で415円も急騰したのだ。
たしかに、金の国際価格も最近は上昇傾向にある。米ニューヨークの金価格は「米国の量的緩和によって、余剰資金が株式や金などの投資に回ってきている」ことで、1月4日の1トロイオンス1630ドル近辺から、25日には1690ドルに迫るところまで値上がりした。
その影響もあるが、田中貴金属は「国内の金価格の上昇は、ほとんど円安が原因とみていいでしょう」と話している。金は通常ドル建てで取引されるので、円安が国内での金価格の上昇に拍車をかけているわけだ。
円相場は、12年12月に83円57銭(月平均)だった。それが13年1月25日(18時)には90円83銭にまで、7円超も下落した。
田中貴金属によると、「1ドル1円動くと、金価格はおよそ50円動くことになります」という。