「国際水準」にはまだ及ばない?
ただ、金融庁は、情報を漏らしただけで処分する方向で検討していたが、「規制の対象となる情報伝達行為ないし取引推奨行為は、『取引を行わせる目的をもって』行われた場合に限定する」(経団連2012年12月11日意見書)など、「過度な規制は市場を萎縮させる」との経済界の意向に配慮し、年末の最終案では(1)情報を漏らした側に不正取引をさせる意図があった、(2)実際に不正取引があった――の2要件を追加した。
一方、課徴金は、経団連が「課徴金が反社会性、反道徳性を問うものではない以上、利得から完全に離れるべきではないとの指摘もある」として不当利得の範囲内にすべきだとの認識を示していたが、金融庁は大幅引き上げ方針を維持する考えで、「個人名公表制度は欧米にもあり、全体として国際的に整合し、遜色もない」(幹部)と強調する。
だが、海外では、米国でさらなる規制強化の議論があり、運用会社、投資家の売買注文の全データを報告する義務を課したり、アナリストが担当企業の幹部らと1対1で会ってヒアリングをしたりすることもできなくなる可能性がある(経済ジャーナリストの相場英雄氏=2013年1月7日JBプレス)といわれ、日本が「国際標準」にまだ及ばないとの指摘は根強い。インサイダー規制の専門家などからは、新規制で情報を漏らした側の処罰の要件について「当初案より厳しくなり、不正の『意図』など立証のハードルが高すぎる」(証券業界筋)との声もある。