沖縄県の尖閣諸島周辺をめぐる日中のにらみ合いが続くなか、両国メディアで「軍事衝突」の可能性が取りざたされるようになってきた。
日中の戦闘機が互いにスクランブル発進させるなど、事態がエスカレートしつつあることが背景にある。両国政府は、記者会見等では互いに冷静な対応を呼びかけている。
森本前防衛相「今まで戦後、やっていなかった活動をしないといけないことも…」
2013年1月10日には、中国空軍の戦闘機を含む複数の飛行機が日本の防衛識別圏の内側に入ったことを受け、自衛隊機がスクランブル発進。中国側も、「自衛隊機が定期パトロール中の中国軍機に近づいて追尾を始めた」として、2機の主力戦闘機を緊急発進させている。1月14日付の中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」も、軍を指揮する総参謀部が「戦争の準備をせよ」と指示したと報じており、日本を念頭に置いているとの見方も出ている。
日本側の動きに、中国メディアも過敏になっている。小野寺五典防衛相が1月15日の会見で領空侵犯への対策を一般論として述べた内容を、中国の領空侵犯を念頭に置いているかのような文脈で、
「無線での警告などに従わずに侵犯を続ければ、警告として信号弾を射撃する方針」(朝日新聞)
などと報じられた。中国メディアでも、これを引用する形で波紋が広がっていた。
さらに、森本敏前防衛相は1月23日の「ミヤネ屋」(読売テレビ)に出演し、
「(安全保障の問題は)我々の住んでいる東アジア、中国だけでなく北朝鮮もあるが、それ以外に、安倍総理は集団的自衛権という問題を大きな政治課題に挙げておられますから、いずれ日本はそういう領域の中に入っていく。今まで戦後、やっていなかった活動をしないといけない、ということだって起こりうる」
と発言。この発言を、環球時報(電子版)は
「この発言は、日本が戦争に巻き込まれるかもしれないことを示唆している」
と論評している。
中国外務省「日本側が軍事色を際立たせている」
だが、日中の公式的な反応は、現時点では抑制的だ。中国外務省の洪磊副報道局長は、1月18日の会見で、
「一部メディアが、日中双方が発砲して軍事衝突に至るかもしれないと報じている」
との質問に対して
「自衛隊の飛行機が出動し、中国側の飛行機の正常なパトロール飛行をさまたげている。日本側は、このように軍事色を際立たせており、緊迫した雰囲気を作り出している」
と日本側を非難しながらも、
「中国側の国家領土の主権を守るという立場は確固たるものだが、同時に、一貫して対話を通じて領土問題を解決すべきだと主張している」
「日本側には冷静に対応し、誠意を示すように求める」
と軍事衝突の可能性を否定。
小野寺防衛相も同日の会見では、
「日本の一部の報道によると、防衛大臣が中国の飛行機がもし日本の領空を侵犯した場合、警告射撃をすることを明確に表明したという報道があった。この日本側の報道が、中国の中で非常に大きく報道された」
と問われたのに対して、
「国際的な基準の範囲で、私どもとしてはしっかり対応するということ。そのことに尽きる」
と、一般論を語ったに過ぎないとの立場を繰り返している。
前出の森本氏も、尖閣問題については、番組の中で、
「不要な挑発活動を中国に対してしている、あるいはしていると受け止められるようなことは決してしてはいけない」
と指摘している。