アルジェリア人質事件、神奈川県警など捜査へ 外国のテロリスト相手に何ができるのか

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   アルジェリアの人質事件について、神奈川県警などが殺人や逮捕監禁の疑いで国外犯の捜査に乗り出すと報じられた。「テロリスト相手に何を」と疑問も出たが、どんな意義があるのだろうか。

   人質事件では、日本人7人の死亡が確認されるという痛ましい事態になった。報道によると、警察庁では、これを受けて、神奈川県警などが捜査に乗り出すことを明らかにした。

2002年のパナマ船籍事件で「国外犯」規定

   2003年の刑法改正で、日本人が外国で殺人など凶悪犯罪の被害者になった場合、加害者は「国外犯」の規定を適用して日本で処罰できる。今後は、遺体を司法解剖したり、関係者から事情聴取をしたりして捜査を進めるという。社員が犠牲になった「日揮」の本社が横浜市にあるため、神奈川県警が捜査の中心になるとされている。

   とはいえ、今回の加害者は、隣国のマリに潜伏しているとされるイスラム武装勢力だとみられている。それだけに、ネット上では、「神奈川県警に何ができるんだよ」「日本の警察が手に負える相手じゃないだろw」といった疑問が相次いだ。

   神奈川県警と言えば、遠隔操作ウイルス事件を未だに解明できず、不祥事も多いというイメージがあるとして、その捜査能力を揶揄する声すらあった。

   国外犯の規定は、02年にパナマ船籍のタンカーで日本人が台湾沖の公海上で外国人船員に殺害された事件をきっかけに加えられた。このときは、タンカーがその後、姫路に入港したが、「公海上」の「外国籍船」における「外国人」による事件であったために、わが国には刑事管轄権がなかった。もし規定があれば、日本でも捜査や処罰は可能だった。

   今回は、現場がアルジェリアで強制捜査ができるわけはなく、日本で犯人を逮捕できる見込みもない。そんな中で、日本の警察がテロリストの捜査をすることにどんな意義があるのか。

   神奈川県警の広報県民課では、取材に対し、まだ警察庁から指示はなく、担当部署も決まっていないとして、「今の段階では、話すことがありません」と答えた。

若狭勝氏「テロ情報を集めることには意義」

   そこで、警察庁の広報室に取材すると、神奈川県警が捜査する意義について、「個別の案件ですので、お答えできません」とのことだった。「あくまでも法律に則って、警察が手続きを進めるということです」としている。

   国外犯捜査については、産経新聞の2008年5月19日付記事が、意義があったとみられるケースをまとめている。

   それによると、フィリピン警察が自殺と判断した邦人の男性は、警視庁が調べると他殺の疑いが出て、現地警察が再捜査の要請に応じたことがあった。また、ミャンマー軍兵士に銃撃されたとされるジャーナリストは、ミャンマー側の主張とは違って、司法解剖などの結果、至近距離だったことが分かった。記事では、日本の捜査について、「独自に収集した情報を現地警察に提供し適正な捜査を促す」と指摘している。

   ただ、ミャンマーのケースは、なかなか現地で認められず、協議は平行線で終わったとしている。

   元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、テロリストでは実質的な捜査は難しいはずとしながらも、こう言う。

「日本人が被害に遭っているのに、日本の警察が何も姿勢を示さなければ、国民を保護する意識がないと言われかねません。もし犯人たちが日本に入国することになれば逮捕できますので、捜査をしていることが大事でしょう。また、テロは世界的に起きていますので、その情報を集めた方がよいわけです。事件が起きたことで情報が入手しやすくなっており、神奈川県警は、警察庁と連絡を密にして、情報を共有していく必要がありますね」

   ちなみに、12年8月にシリア北部アレッポでジャーナリストの山本美香さんが銃撃を受け死亡した事件でも、警視庁は、刑法の国外犯規定に基づき、殺人容疑で捜査をしている。

姉妹サイト