若狭勝氏「テロ情報を集めることには意義」
そこで、警察庁の広報室に取材すると、神奈川県警が捜査する意義について、「個別の案件ですので、お答えできません」とのことだった。「あくまでも法律に則って、警察が手続きを進めるということです」としている。
国外犯捜査については、産経新聞の2008年5月19日付記事が、意義があったとみられるケースをまとめている。
それによると、フィリピン警察が自殺と判断した邦人の男性は、警視庁が調べると他殺の疑いが出て、現地警察が再捜査の要請に応じたことがあった。また、ミャンマー軍兵士に銃撃されたとされるジャーナリストは、ミャンマー側の主張とは違って、司法解剖などの結果、至近距離だったことが分かった。記事では、日本の捜査について、「独自に収集した情報を現地警察に提供し適正な捜査を促す」と指摘している。
ただ、ミャンマーのケースは、なかなか現地で認められず、協議は平行線で終わったとしている。
元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、テロリストでは実質的な捜査は難しいはずとしながらも、こう言う。
「日本人が被害に遭っているのに、日本の警察が何も姿勢を示さなければ、国民を保護する意識がないと言われかねません。もし犯人たちが日本に入国することになれば逮捕できますので、捜査をしていることが大事でしょう。また、テロは世界的に起きていますので、その情報を集めた方がよいわけです。事件が起きたことで情報が入手しやすくなっており、神奈川県警は、警察庁と連絡を密にして、情報を共有していく必要がありますね」
ちなみに、12年8月にシリア北部アレッポでジャーナリストの山本美香さんが銃撃を受け死亡した事件でも、警視庁は、刑法の国外犯規定に基づき、殺人容疑で捜査をしている。