「デスブログ」―タレントの東原亜希さん(30)のブログに書き込まれた人物や企業、地域などに関する物事が高確率で不幸になる、という意味でこう呼ばれている。インターネット上のいわば「都市伝説」のたぐいだ。
この「デスブログ」が週末、にわかに注目された。海外メディアに紹介されて、「世界デビュー」と話題になったほか、「デスブログとはやし立てるのはいじめではないか」と疑問を投げかける大学教授も現れ、議論を呼んでいる。
「787のトラブルの原因は『デスブログレディー』だ」
「デスブログ」伝説の発端は、東原さんが2007年に出演していた「うまなで」という競馬番組だ。東原さんが本命予想で取り上げた馬がことごとく負け、そのうち3頭は骨折した。番組内で東原さんの予想フリップや競馬ノートを「デスノート」とネタにしたことが始まりだった。
東原さんと08年に結婚した柔道家の井上康生さんは、結婚した年に五輪代表落ち、現役を引退した。このため、「東原さんはさげまんなのでは」という説が一気に広まった。それ以降、東原さんがブログで取り上げた物事に不幸が起こるたび、インターネット上で指摘され、「またデスブログがやらかした!」などと面白がって書かれる、という定番の流れが出来上がってしまっている。この「悪ノリ」がついに、海外でも取り上げられてしまった。
2013年1月17日、ゴシップなどを掲載するアメリカの大手ブログメディア「ゴーカー・ドットコム」に、「ボーイング787のバッテリー炎上は日本人モデルのせいか?その通り」というタイトルの記事が掲載された。
「ボーイング787の度重なるトラブルの原因を、日本人は知っている―それは『デスブログレディー』とも呼ばれる日本のアイドル・東原亜希さんだ」
こんな文章で始まる記事は、東原さんの「デスブログ」伝説を解説した上で、12年12月14日に東原さんが更新したブログを紹介している。そのブログには、「息子くん 飛行機がお気に入り」などと書かれ、日本航空(JAL)の飛行機のおもちゃの写真も掲載されていた。その約1か月後、火災や燃料漏れなどの問題が頻発したことを受け、JALは保有する全てのボーイング787型機で運航を停止、米連邦航空局(FAA)も国内の航空会社に787型機の運航停止を要請した、と書いてあり、ブログと787型機のトラブルを結びつけるような内容になっている。
この記事は2ちゃんねるで「デスブログが世界デビュー」として紹介され、「ついに世界に出てしまった やばい」「いつか国際問題になりそうな気がする・・・」などと書き込まれた。
「有名人だからといって、どんなにからかってもいいのか」
こうした「悪ノリ」に異議を唱えたのが、駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授の山口浩氏だ。
山口教授は13年1月18日、「『デスブログ』といういじめ」というタイトルでブログを更新した。「あるタレントのブログを『デスブログ』と呼ぶ人たちがいる」という書き出しで、「誰のブログであれ、特定のブログが『デスブログ』であるという科学的根拠はない。そのブログに何か書かれたことによってその対象に悪いことが起きる、という事実はない」などとして、大人のタレントだから、有名人だからといって、どんなにからかってもいいというのか、学校のクラスの特定の生徒や子役タレントに同じことが行われたら、いじめと受け取るのが常識的では、と糾弾している。
ブログのコメント欄には「見せ物として働いてその報酬を得ている。タレントという職業自体がイジメられっ子と似た性質を持っているんじゃないでしょうか。タレントのブログが晒し者になる事は自然な成り行きなのではないかと思います」「ただブログを書くだけでこれだけの反響をもらえるというのはタレント活動をしている人にとっては間違いなくプラスになる(おいしい)事です。そういう事が解らず過剰反応してイジメと捕らえるのは正義感の押し売り以上の何でもありません」「これはいじめではないか?という問いに答えられるのは当事者たる東原さんだけなのに、なぜに部外者がいじめか否かについてブログで読者(これもまた部外者)と語ろうとするのだろう?」など、山口氏に否定的な意見が多く書き込まれている。
一方ツイッターでは、「心の底からそう思う。恥を知れと言いたい」「これはその通りだ。多分、僕も言ったことあるような気がする。もうやめよう」「いじめそのもので見ていて不愉快という以前に、ちっとも面白くもないので、あれで騒いでいる連中はバカだと思っている」など、山口氏に賛同するツイートも多く、賛否両論で盛り上がっている。
当の東原さんは、今回このような形で話題になっていることについて、特にブログで言及していない。