朝日新聞の木村伊量社長が行った年頭あいさつをきっかけに、紙媒体の「右肩下がり」ぶりに対する危機感が改めて広がっている。
木村社長は、消費税をきっかけに財務基盤が弱い新聞社が経営破たんする可能性に触れたうえ、「デジタル・ネイティブ」と呼ばれる世代について「彼らがある突然、紙の新聞を読み始めることは期待できるでしょうか」と述べ、この世代が年齢を重ねたとしても紙媒体の復権は難しいとの考えを披露した。
「食うか食われるかの戦いです。体力がない新聞社がギブアップして」
木村社長のあいさつは2013年1月4日に行われ、この全文が業界紙「新聞情報」1月9日号に掲載された。あいさつでは、消費増税をきっかけに経営環境がさらに厳しくなることを指摘する中で、
「食うか食われるかの戦いです。体力がない新聞社がギブアップして、新聞業界の地図が塗り変わるようなことも頭に入れておく必要があります」
と、財務基盤が弱い新聞社が経営破たんする可能性にも言及。紙媒体の衰退についても多くの時間を使って言及した。例えば電子ペーパーやオンデマンド出版の普及が進んだ場合については、
「現在のオフセット印刷工場などの生産設備や、トラックによる新聞輸送、そして販売店ASAの全国ネットワークが甚大な影響を受けること間違いなしです」
と厳しい見通しを示した。さらに、
「『デジタル・ネイティブ』と呼ばれるいまの若者たちが社会の中核を担うことになっていくと、彼らに紙の新聞はどこまで読まれるのでしょうか。彼らがある突然、紙の新聞を読み始めることは期待できるでしょうか」
と、反語表現を用いながら、若者が新たに紙媒体の読者になることについては絶望的な見方を示した。