「話し相手になってくれれば3000万円を援助します」――出会い系サイトから送られてきたそんなメールを信じ、出合うための利用料計739万円を振り込んだ30代の主婦が、運営会社を青森地裁に訴えた。
第一回の口頭弁論が2013年1月16日に弘前支部で行われ、出廷した運営会社の前社長が被害金額を返金したい、と述べたとの報道があり、ネットでは「出会い系サイト被害者にとって朗報だ」などと話題になっている。
サイトの前社長が謝罪し「返金を前提に話し合いたい」
この事件は2012年6月、女性の携帯電話に出会い系サイトからメールが入った。家族全てを事故で失ったという男性からメッセージが来ている、というもので、「話し相手になってくれれば3000万円を援助します」と書かれていたという。
女性は男性と直接連絡を取るため、サイトの使用料の「ポイント」を購入し続け、結果的に12年6月から翌月の7月20日まで計11回、出会い系会社が指定した振込先に739万円を振り込んだ。しかし、男性と連絡は取れなかった。
女性は、東京にあるサイト運営会社と当時の社長に対し、約812万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を起こし13年1月16日に第一回の口頭弁論が行われた。サイトの運営会社の当時の社長が出廷し、「自分はこうしたことが行われたことは知らないが、女性がお金を実際に振り込んでいた記録が見つかった」として謝罪、「返金を前提に話し合いたい」と述べた。
ネットではこのニュースに、出会い系で被害を受けている人は多いものの、殆どは泣き寝入り状態だったため、「被害者によって朗報だ!」などと盛り上がった。
出会い系サイトの業者は会社組織の実態がない場合が多い
国民生活センターによれば、出会い系サイト被害の相談件数は年々減ってはいるものの、12年には相談件数が1万3056件あり、この中で収入や利益が得られるなどと誘導する「利益誘引型」の相談は3259件あった。
今回の裁判が本当に、出会い系サイト被害者を立ち上がらせ被害金を取戻すきっかけになるのだろうか。
女性側代理人の葛西聡弁護士に話を聞いてみると、なかなか簡単には訴訟に持ち込むことはできないという。今回の裁判の場合は、訴えた業者が会社登録し実在していたことと、訴訟対象の一人である前社長が出廷したなどの要因があったため、被害金の支払い交渉が進んだ。
しかし、一般的には出会い系サイトの業者は会社組織の実態がない場合が多い。そして、その業者がサクラを使っている、といった不正の証拠を集めることが簡単ではない、などの理由があるという。
「今回の場合も男性がサクラだったのかどうかが分かっていませんし、被害金を返すと言ってはいるものの、まだ口頭弁論は始まったばかりで、本当に返却されるか決まっていないんです」
と葛西弁護士は打ち明ける。第二回の口頭弁論は約一ヵ月後に開かれる。