大阪市立桜宮高校のバスケットボール部の主将を務めていた男子生徒(当時17)が顧問の体罰を受けた後に自殺した問題で、大阪市教育委員会は同部の無期限活動停止を決めた。次に焦点になりそうなのが、入試のあり方だ。橋下徹市長は2013年1月15日夜の会見で、体育科の受け入れ体制が整っていないとして、入試の中止を教育委員会に求めるという異例の対応に出たのだ。入試は1か月後に迫っており、中止すれば混乱は必至だ。教育委員会も「すぐには受け入れがたい」と困惑している。
「今こういう事態だから、1回ちょっと、ここは我慢してもらって…」
1月15日、男子生徒の自殺後初めて大阪市の教育委員会会議が開かれ、バスケットボール部以外にも、体罰が継続的に行われていたバレーボール部の無期限活動停止を決めた。
一方、義家弘介文部科学政務官も大阪市入りして桜宮高校の校長らと面会。学校の状況について
「練習試合の最中、コートの中で(体罰)が行われていて、全く問題にならなかったことが異常。街でいきなり、気にくわないからって平手打ち4発、5発やったら、110番入りますよ!」
「社会と学校が、あまりにもかけ離れている」
などと厳しく批判し、市教委に実態解明を指示した。
波紋を広げたのが橋下市長が同日夜に開いた会見だ。橋下市長は、体育科(募集人数80名)とスポーツ健康科学科(同40名)について入試を中止し、すでに120人募集することになっている普通科に振り替えるように教育委員会に求めたことを明らかにした。橋下市長は、その理由について
「体育科をそのまんま入試をやるなんてことやったら、大阪の恥ですよ!」
「体育科を目指してきた生徒諸君は、頑張ってきたのはよく分かるが、今こういう事態だから、1回ちょっと、ここは我慢してもらって、しっかりこちらの方も受け入れ体制を確認しますんで」
と説明。入試について決定権があるのは教育委員会で、会見に同席していた長谷川恵一委員長は、
「ちょっと市長のおっしゃっている内容については、すぐには受け入れがたいところがある」
と難色を示した。教育委員会では1月21日の会議で結論を出す方針。
普通科への「転進」もハードル高い?
教育委員会が難色を示している背景には、日程の問題がある。体育科とスポーツ健康科学科の入試出願日程は2月13日~14日で、すでに1か月を切っているからだ。また、両学科は国・数・英に加えて3種目で運動能力検査があるのに対して、普通科の試験科目は国・数・英・理・社の5科目。体育科志望の生徒が普通科に「転進」するにしても、1か月で対策するにはハードルが高そうだ。
橋下市長の主張は現時点では十分に理解されているとは言い難く、ヤフーが「桜宮高校の体育科などの募集は中止すべき?」というテーマで行っている意識調査では、1月15日18時時点で4万2000票集まっているうち、約6割が「中止すべきでない」と回答。反対意見には、「受験生に罪はない」といった声が目立つ。