「本が売れない」出版不況といわれて久しいが、2012年の書籍・雑誌の売り上げは前年よりも約600億円減る見込みで、26年ぶりに1兆8000億円を下回る見通しとなった。ピークだった1996年の3分の2程度に縮小したことになる。
なかでも、雑誌は深刻だ。書店はもちろん、販売の主力であるコンビニエンスストアでも売れなくなってきている。
若者、毎週雑誌を買う「習慣がない」
出版物の動態調査や統計をまとめている出版科学研究所によると、2012年1~10月までの書籍・雑誌の売上高(推定)は前年同期比3.2%減の1兆4578億円と、東日本大震災の影響で落ち込んだ11年の実績を下回っている。11月、12月が11年と同じ水準で推移したとしても、12年は1兆8000億円に届かない。
下落幅をみると、書籍が2.3減、雑誌は3.9%減と、書籍よりも雑誌のほうが大きい。雑誌は11年に前年比6.6%減と大幅なマイナスになったうえ、9843億円と1兆円の大台を割り込んでいる。12年の実績はそれをも下回りそうだ。
出版科学研究所はその原因を、「若者の雑誌離れが進み、新たな読者層を獲得できていないため」と指摘する。
たとえば、ファッション誌。かつては若い女性の多くが『anan』や『non‐no』を読んで情報を仕入れて、さまざまなブームやスタイルをつくってきたが、そういった情報の入手先が雑誌からインターネットに代わった。
また、「最近の週刊誌は内容によって売れる週とそうでない週がはっきりしている。コンスタントに売れないのは、若者がお金の遣い方にシビアになっているから。情報はネットで入手。雑誌を買っていたお金はケータイ代などに回して遣り繰りしているので、『毎週雑誌を買う』という習慣がない」と説明する。
一方、2012年は「電子書籍元年」などといわれ、楽天の電子書籍端末「コボタッチ」や米アマゾンの「キンドル」が参入。競争激化とともに、普及に弾みがついた。
最近は電車の中などで新聞やマンガ、週刊誌を読んでいる人をあまり見ない。代わりにスマートフォンやiPadなどで「読んでいる」人を見かけるようになった。雑誌の「苦戦」はその影響もある。
女性誌「付録もの」は増加傾向にあるが、勢いを失う
雑誌の凋落は、コンビニでの売り上げが振るわなくなっていることに象徴されている。あるコンビニ大手は、「書籍や雑誌の棚が縮小傾向にあることは否めません。電子書籍の普及や、ネットで本を購入するお客様は増えているようですから、手にとって本を買うことがなくなってきたのだと思います」と話している。
出版科学研究所の「2011 出版指標年報」によると、月刊誌、週刊誌は販売、広告とも不振で休刊点数が創刊点数を上回り、点数は4年連続で減少している。
ここ数年では、宝島社が有名ブランドの付録をつけて売り出した女性誌が大当たりして「付録もの」は増加傾向にあるが、それも読者の目が厳しくなり、勢いを失った。週刊誌は、総合週刊誌が中高年向けのヌードやSEX特集で一時的に部数を回復させるのがやっとという有様だ。
同研究所は、「ファッション誌などについても、(コンビニが)売れないアイテムを選別して落としていると聞いています。ただ一方で中高年向けや健康をテーマにした雑誌など、売れるアイテムに換えていく傾向にあるようです」と話している。
雑誌を読む習慣があり、人口構成の中で大きな割合を占める団塊の世代の取り込みが、「当面の売り上げを左右していく」とみている。