爆弾低気圧による大雪から一夜明けた2013年1月15日朝、首都圏の鉄道は通常通りに運行され、通勤ラッシュに大きな乱れはみられなかった。その中で、唯一運転が再開できなかったのが、東京都荒川区の日暮里と足立区の舎人地区を結ぶ「日暮里・舎人ライナー」(9.7キロ)。
舎人ライナーは、車輪にゴムタイヤを使用しており、路面が凍ったため運行できなくなったのだという。だが、同様の仕組みを採用する「ゆりかもめ」は、ほぼ平常通りに走った。違いはどこで生まれたのか。
深夜1時には始発からの運休を宣言
舎人ライナーはタイヤで専用軌道を走る「新交通システム」の一種。タイヤを使用すると、加速やブレーキが迅速にできるという利点があるため、駅と駅の間が短い場合に採用されることがある。ただしこの方式では、専用軌道が凍結した場合はタイヤが滑る危険性が高まる。
この影響を受けたのが1月15日朝の舎人ライナーだ。運営する東京都交通局は、1月15日深夜1時の時点で「走行路凍結のため、15日初電から全線で運休を予定しております」と発表。通勤ラッシュの時には運転できず、9時50分になって舎人公園駅から日暮里駅間で運転を再開。全線の運転が再開されたのは11時だった。
これに対して、同様のシステムを導入している「ゆりかもめ」は、車両点検で一時的にダイヤが乱れたものの、大きな混乱はなかった。
舎人ライナーでも「ゆりかもめ」と同様の指針定める
「ゆりかもめ」のウェブサイトでは、降雪時の対策について
「積雪が2~3センチ程度までは、ロードヒーター(発熱線)と車両の除雪装置により、通常どおりの運転を続けます」
「積雪がこれ以上になりそうなときは、融雪剤を散布して雪が凍結しないようにします。積雪が10センチを越す大雪の状態になると除雪作業員を増やして人力で除雪し、列車の運転に努力しますが、間引き運転(等時隔運転)になります」
と説明している。東京都交通局によると、舎人ライナーでも「ゆりかもめ」と同様の指針を定めており、1月14日は、雨や雪が止んだ22時頃から融雪剤をまき、職員が除雪にあたったものの、降雪量が多く、全く間に合わない状況だったという。
交通局では、「ゆりかもめ」との違いが出た背景として、「地域的な問題」を挙げている。具体的には、(1)埼玉県に近い内陸部を走っている(2)川を渡るところもある(3)強い風が吹くところもある、という理由で、ゆりかもめよりも気温が下がって軌道が凍結しやすいという説明だ。舎人ライナーは荒川と隅田川の2つの川を渡っている。
ただし、「ゆりかもめ」もレインボーブリッジを渡っており、同様に軌道が凍結しやすい環境にあったとの見方もできる。
気象庁の「アメダス」で都内の内陸部の気温などを観測している練馬の観測地点は、1月13日から15日午後にかけて機器の不調で気温の測定ができていない。このため、沿岸部と内陸部で、大雪の際の条件の違いを検証するのは現状では困難だ。