会社が「余剰」とみなした正社員らに事実上の自主退職を迫る狙いがあるといわれる「追い出し部屋」が、大手企業の一部に設置されていることが問題視されるなか、リストラされたり、希望退職に応じたりする正社員の再雇用を支援する「アウトプレースメント」と呼ばれる事業が注目されている。
いわゆる「再雇用支援サービス」だが、半面、日本ではネガティブにとらえられがちなようだ。
リストラ一人あたり100万円前後の費用負担
「アウトプレースメント」は、業績の悪化などを理由に人員削減を行う企業がリストラ対象者との契約解除を円満に解決するために依頼するもの。リストラ対象者の再雇用のあっせんや受け入れ企業の開拓、人材教育や研修・スキルアップなど、再雇用をめぐる諸問題を解決するサービスだ。
専門に行っている大手、チャレンジャー・グレイ・クリスマスでは受託企業数が666社あり、製薬会社や電機、自動車に総合商社、金融から建設、IT・通信に公官庁までと幅広い。「ビジャスト」や「マイコミエージェント」などもメイン事業として取り組んでいるほか、人材派遣事業のパソナグループなども手がけている。
富士通総研のレポートによると、日本での市場規模は2002年で300億円ほど。リーマン・ショック後に大手企業のリストラが増え、失業率の上昇とともに利用も増えて、最近の市場規模は500億円程度とみられている。
サービスの最大の特徴は、費用は人員削減を行う企業が負担すること。リストラ対象者の人数や研修などのサービス内容によって負担額は異なるが、対象者一人あたり1年のサービスで100万円前後が相場とされるので、安くはない。
そのため、利用が大手企業に限られてしまうことや、雇用状況が安定しているときは受け入れ企業の数が少なくなるため、マッチングが難航するケースも少なからずある。
もちろん、サービスを受けるリストラ対象者は会社の希望退職に応じるなど、いわば「納得」して退職する正社員が大前提。とはいえ、必ずしも再就職先の提供を確約するものではない。