「エネルギー・原子力大転換 電力会社、官僚、反原発派との交渉秘録」――。民主党の仙谷由人・元官房長官はこうしたタイトルの著書を、2013年1月17日に講談社から発売する。
福島第1原発事故の後、仙谷氏が主導的立場で取り組んだ原発再稼動などに関するドキュメントが主な内容だが、とりわけ目を引くのは「脱原発」を主張し続けた鳩山、菅の元首相コンビへの批判で「もう少し深く悩んでほしかった」「運動論で政治はできない」と筆を尖らせている。
「原発ゼロの時期を明示しなければ、選挙もたたかえないぞ!」
菅氏への批判はページを割いて2か所に登場する。
1か所目は第1章の「菅さんの政治運動論」という節だ。話の舞台は民主党のエネルギー政策を決める2012年9月の会議で、2030年までに原発稼動をゼロにするか否かが最大のテーマとなっていた。
「国内外の変動要素が多いエネルギー問題に絡んで長期シナリオを強引に描くことは、将来世代のエネルギー選択の自由を束縛することになる」。こんな思いから仙谷氏は原発ゼロ宣言に否定的立場だった。
だが、事故当時の首相で、当時民主党最高顧問の菅氏は連日会議に出席し、「2030年ではなく2025年までに原発をゼロに」と訴えた。その目標に明確な根拠はなかった、と仙谷氏は言う。
菅氏は「原発ゼロの時期を明示すべきだ。期限を切らなければ脱原発は実現しないし、選挙もたたかえないぞ!」とも主張した。
この提言は結局支持されなかったものの、仙谷氏は著書で「菅氏の主張は政策である以前に政治運動論」「選挙スローガンとしての『脱原発』」と切って捨てる。
読者に対しては「『原発に依存しない社会の一日も早い実現』といった、理念と感情に流されたスローガンでは解決できない問題がある」と訴えている。