郵政民営化・財投改革の「真逆」
今回の「産業政策」は、麻生財務相、甘利経済再生相、茂木経産相が主導している。そこでは、「無為無策」から「有害無益」になるおそれがある。それは、今度の緊急経済対策で「官民基金」がいろいろな分野で出ているからだ。政府系金融機関が株式や返済順位の低いリスクを伴う資金を供給し、民間企業の投融資の呼び水とする。そのため、日本政策投資銀行や国際協力銀行が、国内異業種交流や海外進出支援する。
なんのことはない。小泉構造改革で行われた郵政民営化・財政投融資改革の真逆を行くというわけだ。金融について、郵政民営化や財政投融資改革は、日本の官営金融は成り立たないという国際標準への回帰であった。しかし、民主党政権時代で、自民党は事実上郵政再国営化する民主党案に賛成した。それから思うと、郵政民営化と同時に実施された政策金融の民営化をひっくり返して、官民基金を持ち出すのは、大きな政府指向・官依存の旧来の自民党らしいともいえる。
安倍政権内で、新しい自民党スタイルの安倍首相サイドと旧来の自民党スタイルの麻生財務相サイドで政策の方向性が違うようだ。旧来の大きな政府指向・官依存の「産業政策」はうまくいかないだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。