不漁の場合、国内でも見直し論が出そう
日本の調査捕鯨をめぐっては、米国の裁判所が昨年12月18日、シー・シェパードとポール・ワトソン代表に妨害を禁じる仮処分命令を出した。仮処分命令は南極海で操業する日本の船団を攻撃したり、公海上で500ヤード(約460メートル)以内に近づくことを禁じている。しかし、シー・シェパードは「日本の船団が南極海に到着すれば、私たちを見つけることになる」とのコメントを発表し、命令に従わない考えを示している。このため水産庁は例年以上に警戒感を強めている。
昨年の南極海の調査捕鯨では、1月4日、日本の捕鯨船「第3勇新丸」(720トン)がシー・シェパードの小型ボート2隻から、船首付近を横切られたり、浮きのついたロープを投げ込まれるなどの妨害を受けた。同8日にはシー・シェパードを支持する豪州の市民団体の男3人が、水産庁の監視船に乗り込むなどしたほか、2月には第3勇新丸がシー・シェパードから塗料が入った瓶を投げつけられるなどの妨害を受けた。
鯨研がクジラを捕獲・解体後、国内市場に供給した鯨肉は、2002年以降、年間3000トン台~5000トン台で推移したが、2011年以降は反捕鯨団体の妨害で2000トン台に縮小した経緯がある。これに対して、日本国内の鯨肉の在庫量は2004年以降、3000トン台~5000トン台と増加傾向にあり、近年は年間の供給量を上回る勢いだ。
供給過剰となった背景には、鯨肉の流通量が1960~70年代の商業捕鯨当時に比べて縮小したため市場で割高となり、店頭から鯨肉が消えたことがある。今冬の調査捕鯨がシー・シェパードの妨害で2011年に続いて不漁となった場合、在庫が縮小して鯨肉がさらに割高となり、例年以上の販売不振に陥る可能性もある。その場合、国内でも調査捕鯨の見直し論議が高まるのは必至だ。