靖国放火犯の「政治犯」認定は正しかったのか 韓国大手紙ですら「釈放」に疑問を呈する

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   靖国神社の門に放火した中国人の男を、韓国の裁判所が「政治犯」だと認定して日本への引き渡しを拒否したことをめぐり、韓国の中央日報が、決定に疑問を呈する異例の論説を掲載した。朝鮮日報が「反日無罪」ともとれる社説を掲載する中、大手紙の中でも論調が分かれている。

   日中韓の3か国を巻き込んだ外交問題に発展していたのは、中国人の劉強・元受刑者(38)の身柄の取り扱いをめぐってだ。劉元受刑者は2011年12月26日未明、靖国神社境内の「神門」に放火。門の扉の一部が、幅数十センチ程度にわたって焦げるなどの被害が出た。

靖国放火直後に韓国に出国、日本大使館に火炎瓶投げる

   劉元受刑者は同日中に観光ビザで韓国に渡り、翌2012年1月8日にソウルの日本大使館に向かって火炎瓶を投げた容疑で逮捕された。5月にはソウル中央地裁から懲役10か月の実刑判決を受けたが、11月初旬に刑期が満了。身柄をどうするかが焦点になっていた。

   劉元受刑者は火炎瓶事件の取り調べ中に靖国神社での犯行についても供述していたため、日本の警視庁は劉元受刑者の逮捕状を取っており、犯罪人引き渡し条約に基づいて引き渡しを求めた。だが、中国側も「人道主義の観点」を理由に、日本に引き渡さずに強硬に中国への送還を要求。日中韓の綱引きが続き、韓国政府は裁判所に判断を求めることになった。

   ソウル高裁で行われた審理では、劉元受刑者側は、犯行動機について、

「祖母が平壌出身の元日本軍慰安婦で、慰安婦問題に対する日本政府の対応に反発したから」

などと説明。犯行は「政治的な動機」によるもので、条約上も引き渡しを拒否できると主張した。検察側は、引き渡しは単なる放火容疑で裁くことが目的であって「政治犯」ではないと反論。裁判所は弁護側の主張を採用し、13年1月4日に、靖国への放火は「政治犯罪」にあたるとして、劉元受刑者の身柄を日本に引き渡さない決定をした。同日夜には劉元受刑者は釈放され、1月4日には韓国を出国して中国・上海に向かった。中国政府は韓国政府の対応を歓迎する一方、日本政府は遺憾の意を伝えた。

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