「金融緩和派」から選ばれる
安倍首相の考え方に近いのは内閣官房参与に任命された浜田宏一・米エール大教授(77)、前日銀副総裁の岩田一政・日本経済研究センター理事長(66)、岩田規久男・学習院大教授(70)らの学者だ。安倍氏が会長を務めた「増税によらない復興財源を求める会」にも出席した安倍氏のブレーンの面々だ。
高齢の浜田氏は除くとして、岩田一政氏は政府・日銀による外国の債券購入による円安誘導も提言し、衆院選の自民党公約に取り入れられた。旧経済企画庁(現内閣府)出身で、2003~08年の日銀副総裁時代は金融政策決定会合で利上げに反対票を投じた。岩田規久男氏は、物価目標と強力な金融緩和を主張し、日銀の伝統的な金融政策を痛烈に批判してきたバリバリの「緩和派」だ。
学者ではこの他、2006~07年の第1次安倍内閣で、経済財政諮問会議の民間議員を務めた伊藤隆敏・東大大学院教授(62)、「小泉改革」の司令塔として経済財政相などを務めた竹中平蔵・慶大教授(61)も候補。伊藤氏は1990年代から物価目標の導入を提唱し、08年には副総裁候補に名が挙がったが、民主党にダメ出しされた。竹中氏も緩和論者だが、こちらは小泉時代の"専横"がたたり自民党内に反発する議員が少なくない。
近年の役人批判で劣勢と見られていた財務省OBだが、ここにきて政権内で「容認」と受け取れる発言が相次ぎ、にわかに騒がしくなってきた。
麻生太郎副総理兼財務相兼金融相が「組織を動かせる人が望ましい」(12月29日毎日朝刊インタビューなど)、「向いている人なら誰でもいい」(1月4日ミャンマーで)と、財務省出身者を積極的に推さんばかりの発言をしている。甘利明経済財政・再生相も「財務省OBでも適任の方と不適任の方がいる」(12月29日日経朝刊インタビュー)と同様の考えを示している。
そこで有力視されるのは、やはり武藤氏。自民党とのパイプの太さはもちろん、霞が関への影響力も十分。秋以降、新聞のインタビューなどで積極的に発言、日銀のこれまでの政策が不十分との認識を繰り返し表明している。参院選を決戦場と位置づけ、「経済をこのまま上向かせるためにも、武藤氏の安定感は何物にも代えがたい」(与党筋)との声もかかる。元財務官の黒田東彦(はるひこ)・アジア開発銀行総裁(68)も、財務省内では物価目標積極派としてしられるダークホースだ。