安倍晋三内閣がスタートし、円安、株高が進む中で、2013年4月に任期が切れる日本銀行の白川方明(まさあき)総裁の後任人事が本格的に動き出す。
大胆な金融緩和によるデフレ脱却を最優先課題に掲げる「アベノミクス」を象徴する人事とあって、与野党の思惑もさまざまに渦巻く。
想定外だった白川氏
日銀総裁は長く、日銀生え抜きと財務省(旧大蔵省)出身者が交互に就く「たすき掛け」が続いたが、接待汚職や財務省の天下りへの批判などから、ここ3代は日銀出身者が続いている。ただし、日銀が財務省との力関係で優位に立ったというより、「財務省(出身者)がだめという反動で、無難な日銀生え抜きの起用になっただけ」(財務省OB)というのが実態だ。
その日銀生え抜きも、接待汚職からの緊急避難で就任した速水優氏の後、エースの福井俊彦氏(キヤノングローバル戦略研究所理事長)が就いたのは当然の流れとしても、白川現総裁の誕生は日銀にも想定外だった。財務次官から日銀副総裁に転じていた現大和総研理事長の武藤敏郎氏(69)は、5年前、福田康夫内閣が総裁昇格を提案しながら、ねじれ国会の下で当時の小沢一郎民主党代表の自民党揺さぶりの一環で参院で否決された。さらに福田内閣が提案した歴代財務次官、財務官経験者をすべて拒否され、副総裁に就いたばかりの白川氏が総裁に選び直された。
「大胆な金融緩和を行っていただける方」。安倍首相が、こう繰り返しているように、衆院選の公約でうたった物価上昇2%のインフレ目標達成のために、積極的な金融緩和論者を軸に人選が進むのは間違いない。そして財務省OBの是非も引き続き大きな判断の分かれ目になる。