「恋愛経験のある人には入試バリアを下げる」――。京都大学総長がこんな発言をしたとして、ネットで波紋が広がっている。
発言の趣旨は、受験に関係がない科目にも力を入れ、人間関係などでさまざまな経験をつんで、幅広い教養を身につけて入学して欲しいというものだった。ところが、「恋愛」という言葉が入っていたため、ネットユーザーらを刺激、「恋愛差別きたー」「非リアは死ねばいいのですね」などと非難轟々だ。
「恋愛始め人間関係の葛藤とか、幅広い経験をしてきた人に入試のバリアを少し下げる」
京都大学の松本紘総長は2013年1月5日付の毎日新聞のインタビューの中で、今の子どもたちは偏差値一辺倒で「入試の技術」だけを身につけて大学に来ていると指摘した。本当の学力がないため、大学に入っても進路を見失い、社会に出ても役立たない人間がいる。一方で、成績が良いから医者になるといった「単細胞でモノレール的なキャリアパス」がしかれているという。
その上で、社会全体で人を育てる制度を構築するための、大学側での入試改革の構想を以下のように話した。
「受験勉強ばかりで、高校時代にやっておくべきこと、例えば音楽とか、恋愛始め人間関係の葛藤とか、幅広い経験をしてきた人に入試のバリアを少し下げる。大学では意志をもって一生懸命勉強して、卒業してもらう。出口管理ですね」
恋愛はあくまで「人間関係の葛藤」の一例として挙げられているのだが、これが「恋愛経験ある人には入試バリアを下げる」と言っているに等しいとして、ネットで反感を買った。
「恋愛差別きたー」「非リアは死ねばいいのですね」「フラれて恋愛できなかった人はどうすればいいんですかね」「男子校出身で女に触れる機会がない人間はどうするのだろか」と非難轟々となり、フリーライターの赤木智弘さんはツイッターで「革命的非モテ同盟は今こそ京大に対して宣戦布告せよ!!」「むしろ、多くの人が恋愛をしている中で、恋愛をしていない、童貞であるということこそ、人とは異なる多様な経験と言えるのではないか」と息巻いた。非モテ、非リアとはネットスラングで、ここでは恋人がいない人を指す。
また、受験生から「とりあえず親に『京大は恋愛経験も受験に加味するらしいからダメかもしれない』って電話しておきました」という悲鳴も上がった。
「フェイスブックのフレンド数を採用基準にする企業と一緒」
京大生とみられる人物のツイッターアカウントも猛反発している。
「結局のところ恋愛経験までもを入試のハードルを下げる条件にするってことは、人間関係が他の価値と交換可能だと言ってるようなものなんだよな。『入試の為に恋愛する』位普通に起こりそう。これは顔本(編注:フェイスブック)でフレンドがどれ位いるかどうかを採用の基準にする企業と一緒。死ね。人間関係はクーポンじゃねえ」
京大では12年11月24日に入試改革検討本部を設置。学部ごとに「京大方式特色入試」の検討を進めている。京大広報室は7日、J-CASTニュースの取材に対して、松本総長の話の真意をこう説明した。
「受験に関係がなくても、音楽や体育などの教科もきちんとやり、いろんなことを経験して幅広い教養を身につけ、大学で勉強するための人間的基礎をもって入学してきて欲しいという趣旨です」
その上で、恋愛をはじめとする人間関係を入試で評価するのかについては、「『人間関係の評価が5です』と点数をつけるのは難しい」との見方を示した。
ネットにも、改革を「やっとか アメリカでは当たり前」などと肯定する人もいないわけではない。また、ノーベル賞を受賞した同大の山中伸弥教授を引き合いに出して、「(山中教授は)コミュ力(編注:コミュニケーション能力のこと)の塊じゃん」「山中教授は中学のころから今の嫁と付き合ってるしね」と指摘する人も複数いた。