全日本空輸は2012年12月、北九州を拠点とする新興航空会社、スターフライヤーの発行済み株式約18%を取得し、筆頭株主になった。
全日空は格安航空会社(LCC)のエアアジア・ジャパンを子会社化するなど国内航空会社との連携を強化しており、得意とする国内線事業でライバルの日本航空に差をつけ、航空業界を巡る激戦に勝ち抜こうとの狙いとみられる。
「他の航空会社が取得したら、共同運航に支障が出る」
全日空は、スターフライヤーの発行済み株式約17%を保有していた米国の投資ファンド、ディーシーエム・フォー・エルピー(DCM)から全株式を約24億円で買い取り、既に保有していた分を加え保有比率を約18%に引き上げた。DCMは2002年のスターフライヤー設立直後から株式を保有していたが、全株式の売却を決めて、全日空に話を持ちかけ、全日空側が応じた。
スターフライヤーは北九州-羽田線を中心に、国内・国際4路線で定期便を運航している。全日空とは2005年に業務提携を結び、2007年には全日空がスターフライヤーを支援する形で株式約1%を保有、現在は羽田-北九州、関西両線で共同運行をしている。全日空は今回の株式買い取りについて、「他の航空会社が取得したら、共同運航に支障が出る」と説明する。ただ、旅客事業収入全体の約3分の2を国内線事業が占める全日空にとっては、「スターフライヤーと密接な関係を築くことで、今後の国内線の強化につなげたいのだろう」(航空関係者)との見方が一般的だ。
新興航空4社のうち3社の大株主
全日空は既にエアアジア・ジャパンを傘下に収めているほか、同じLCCのピーチ・アビエーションの大株主でもある。さらに、エア・ドゥ(札幌市)の株式も約14%保有し、スカイネットアジア航空(宮崎市)の出資比率も約12%に上り、スターフライヤーを含めれば新興航空4社のうち3社の大株主となる。
全日空の伊東信一郎社長はスターフライヤーの筆頭株主になったことで、「提携先の航空会社のネットワークを活用し、顧客の利便性を向上させたい」とのコメントを出した。スターフライヤーを中心に、共同運航を拡大し、機材の共同購入などでコスト削減を進めて、競争力強化につなげたいとの思惑がにじむ。実際、スターフライヤーは「積極的な事業推進に全日空の力を借りたい」としており、共同運航を超えた幅広い事業協力も視野に入れているとみられる。
2013年3月に拡大する羽田空港の国内線発着枠でスターフライヤーは1日5便を確保し、計19便に増える。「ドル箱路線」とされる羽田を拠点とした共同運航の拡大などで、全日空はいっそう優位に立てる余地が広がる。
ただ、経営破綻して一時は地方路線を縮小した日航が再上場を機に、巻き返しを図るはず。国内線事業を巡る全日空、日航を中心とした戦いは今後、一段と激しさを増しそうな状況だ。