日本でも自動車中古(リユース)部品の本格利用が始まる気配が出ている。日本損害保険協会を中心に関連業界が集まり、中古部品の活用拡大を話し合うためのテーブル「自動車リサイクル部品活用推進検討会」が作られ、中古部品の流通拡大に向けた話が始まる。
損保協会以外の参加業界団体は、自動車整備業の日本自動車整備振興会連合会(日整連)、中古車関連の日本中古自動車販売協会連合会(中販連)および自動車リサイクル部品事業者の団体である日本リサイクル部品協議会で、2012年11月に開かれた初回の会合には経済産業省、環境省、国道交通省からも担当者が出席した。
中古部品は、メーカー提供部品の半値が相場
自動車リユース部品がにわかに注目されだしたきっかけは、損害保険各社が12年10月に実施した自動車保険の料率制度の改定だ。自動車保険は損保各社の収益源だが、新車販売の低迷、支払い保険金の上昇で収益が悪化していた。保険料を引き上げればよいのだが、負担感が重くなると保険離れを加速することが懸念されるため、料率制度を改定し、事故を起こしたドライバーの保険料負担を重くする方向に舵を切った。
保険による事故車修理は「原状復帰」を原則にするが、日本では修理用部品供給で自動車メーカーが提供する「純正部品」のシェアが高く、この新品の「純正部品」で事故車を修理することが日本のクルマ社会で習慣として定着してきた。
これに対して中古部品価格は、メーカーが修理用に提供する部品の半値が相場になる。損保各社は料率制度改定ととともに自動車事故にかかわる支払い保険金を圧縮し、自動車保険の収支改善につなげたいとの思いから、安価な中古部品にスポットをあて利用促進を図ろうとしている。
CO2排出量削減でも新品部品より有利
さらに二酸化炭素(CO2)排出量削減という地球環境問題の視点でも新品部品より中古部品は有利になる。整備業界を指導する国土交通省、業界団体の日整連は、自動車整備業をグリーン化するためのアイテムとして中古部品を利用したいと考えており、自動車修理の実作業でも欠かせぬ存在でもあるため、同一のテーブルに着いた。
しかし、中古部品の一般的なイメージは芳しくない。盗難車が不法な解体ヤードに持ち込まれ、分解・輸出される事件などと重ね合わせ、中古部品業界そのものを誤解している消費者もいる。最近でこそ中古部品販売グループ最大手のNGP日本自動車リサイクル事業協同組合がテレビCMを全国放送するなど消費者への積極的なアピールを行っているが、業界を代表するような上場企業はなく、クルマ好きなどを中心に「知っている人は知っている」という存在だった。業界の直接の顧客は整備事業者であるために、直接消費者に働きかける機会がほとんどなかったと言ってよい。
その一方で、業界は1990年代初頭にコンピューター導入が始まり、グループで在庫を共有し、仲間の中古部品も自社の在庫と同じに扱い、全国販売する態勢が作られている。
環境省の支援を受け、利用促進につながるマニュアル作り
リサイクルへの関心の高まりから中古部品業界を消費者団体などが見学する機会がでてきているが、コンピューター管理が進んだ中古部品業界の販売態勢に見学者は一応に驚く。さらに2011年4月に日本自動車リサイクル部品協議会に加盟する事業者で品質・保証基準を共通化し、安心して消費者に安心して中古部品を使ってもらえるようにした。
損保業界から送られてきた秋波にリサイクル部品業界は期待を高めているが、まだ業界間の話し合いは始まったばかり。整備の現場は「欲しい部品が手に入りづらい」とか「価格が高い」などとした中古部品に対する不満を指摘する。リサイクル部品協議会は環境省の支援を受けて、中古部品の利用促進につながるマニュアル作りを進めようとしているが、中古車輸出業者との競合による部品取り車両の仕入れ価格の高止まり、輸送費の上昇など業界内部に悩みを抱える。
そして何よりも課題となるのは、事故車修理を新品部品で修理してきた過去の習慣で、現状復帰という原則を消費者に理解してもらわなければ、中古部品の市場は拡大しようがない。