市観光担当課は「上海などでの誘客活動は必要」
2012年初め、新盛さんは地元の業者と協力して、中国からダイビングに訪れた5、6人の観光客の食事をペンションで請け負った。このとき宿泊はしなかったが、夏には再訪するとの話がまとまった。「この人たちがサービスに満足して、帰国後に口コミでうちのペンションの話を広げてくれれば新規の顧客が増えるかもしれない」と、期待も高まった。
ところが、夏の訪問は突然キャンセルされたという。尖閣問題の影響があったのか、いまだに理由は不明のままだ。中国市場開拓の第1歩となりえただけに、新盛さんは落胆を隠せなかった。
地理的に近い台湾に加えて、人口が多い中国の観光客を呼び込みたいのは新盛さんだけでないだろう。2013年3月には石垣新空港の開港を控えている。市観光振興推進課はJ-CASTニュースの取材に対して、これまでに中山義隆市長を中心に韓国や香港で誘客活動をしてきたという。中国については「(石垣市にとって)観光産業はリーディング産業。中国は大きなマーケットと考えており、上海などでの誘客活動は必要です」と回答した。
2012年末時点で石垣島に路線を持つ国際線は台湾の航空会社に限られるが、市長らは新空港での国際定期便の誘致にも積極的だ。格安航空会社(LCC)の人気が高まっていることもあり、中国からの直行便も就航させて観光客の大幅アップにつなげたいところだろう。
ただ現状では、先行き不透明だ。地元の識者に取材すると「尖閣問題が暗礁に乗り上げている今、中国で大々的な観光プロモーションは打ちにくいだろう」とみる。沖縄での観光の場合、中国人は「買い物がメーンで、リゾートでのんびり過ごすスタイルはまだ定着していない」という。新空港に合わせて石垣の魅力を伝え、リゾート観光の楽しさを提案したかったところだが、当てが外れた格好となっている。
沖縄県が発表している「入域観光客統計」をみると、2008年の593万4300人をピークに減少傾向で、2011年は震災の影響で552万8000人まで減らした。「海の家族」オーナーの新盛さんは、データをとったわけではないとしつつも、感覚的に2012年の方が前年よりも宿泊客が少ないとこぼす。石垣島からフェリーで10分の距離にある竹富島では、飲食店の女性が「過去4年ほど、お客さんが減り続けている気がします。以前は12月の『シーズンオフ』でも大混雑だったのに」と話した。
やや頭打ちの感がある観光客誘致に、新空港を「ウリ」に中国で攻勢に出たいところだが、今のところは身動きが取れなさそうだ。