「軽」の設計、技術、製造の一元化で成果
―― ホンダは他社と比べてどのような点が違うのでしょう。
杉本 東日本大震災後、本田技術研究所(栃木県芳賀町)の研究・開発要員を鈴鹿工場(フィットやN‐BOXなどを生産)に移し、軽自動車の設計、購買、生産技術、製造に携わる従業員を集めて、そこで互いの意見をぶつけながら開発できる環境を整えました。開発と生産を一元化したことで軽自動車の新たな可能性を引き出すことに成功、おおいに成果を発揮したのです。
そういった技術は小型車などの開発や生産にも、必ずいい効果をもたらすでしょうし、なかでも「フィット」の次なるクルマに、わたしは注目しています。
―― 三菱自動車の大規模リコールは同社自身に、また好調な軽自動車市場に影響はありませんか。
杉本 残念としか、言いようがありませんね。三菱への影響については国土交通省の立ち入り検査もありますし、まだ全容がはっきりしないのでなんとも言えません。ただ、軽自動車市場への影響はほとんどないと考えています。
―― 最近は低燃費と低価格が優先されて、電気自動車は置き去りにされているようです。
杉本 電気自動車は値段が高いことがあります。それにインフラ整備が遅れています。たとえば、わたしはマンション住いですが、駐車場に電源はありません。一戸建て住宅なら電源が確保できるかもしれないですが、旅先や買い物先に必ずあるとはいえません。充電を心配しながらクルマを運転したくないですからね。電気自動車の普及にはもう少し時間がかかるでしょう。
杉本 浩一(シニアアナリスト)
すぎもと・こういち 京都大学を卒業後、1994年に野村総合研究所に入社。自動車部品、米国自動車、自動車各セクターを野村證券金融経済研究所、米国野村證券などで担当する。その後2006年にメリルリンチ日本証券の自動車担当のディレクター・シニアアナリストとして勤務。2011年5月にBNPパリバ証券入社。自動車アナリストの経験は通算17年を超える。
投資情報のInstitutional Investors誌ランキングでは、自動車部品部門で1999年と2000年に1位。自動車部門2011年4位。