海外での現地生産に早くから取り組んでいた日産自動車やホンダ。その分、中国での大規模な反日デモの影響は小さくなかったが、世界一の自動車市場となった中国への「熱」は冷めることはないようだ。
同時に、日本への「逆輸入車」も珍しくなくなった。日産「マーチ」などに続いて、2012年は三菱自動車が「ミラージュ」を11年ぶりに復活させて、タイから逆輸入して発売した。
国内市場はエコカー減税が終了したことで生産・販売ともに急減しているが、そうした中で大健闘しているのが「軽自動車」市場だ。スズキ、ダイハツの2強に、ホンダが肉薄している。2012年末に飛び込んできた三菱自動車の大規模リコール問題は「軽」のイメージを傷つけたが、それをものともしない勢いがある。
ホンダは軽自動車にどれほど本気なのか――。BNPパリバ証券で自動車セクターを担当するシニアアナリスト、杉本浩一氏に聞いた。
若い女性に「かわいい」といわれる
―― ホンダは軽自動車シフトを強めています。
杉本 ホンダの軽自動車シフトは本気です。軽自動車はかつての、消費者にとって「小さくて危ない」クルマではありません。低燃費で経済的。規格が変わった(1997年)ことで「危ない」というイメージも薄れました。メーカーにとっても、儲からないクルマから儲かるクルマへと変わっています。ホンダは軽自動車の分野でブームを起こしつつあるといえ、また海外にも攻勢をかけていきます。
―― かつてホンダが経営不振に陥ったとき、ミニバン型乗用車の「オデッセイ」がそのピンチを救いました。いまのホンダにとって、軽自動車がエポックメイキングなクルマになるということでしょうか。
杉本 その可能性があるということです。「N」シリーズには注目しています。
―― どのようなところで、そのようなことを感じますか。
杉本 これはホンダだけではありませんが、いまの軽自動車は若い女性に人気があります。とにかく、車両のデザインや色遣いがいい。「かわいい」と評判ですよ。
軽自動車はいまでも地方の必需品であることには違いありませんが、最近は町でも多く見かけます。町でも「おしゃれ」に乗れるところが人気なんです。それに燃費のよさが加わったのですから、女性に人気が出ないはずがありません。
―― 軽自動車戦争は熱いです。
杉本 軽自動車のメリットには税の恩典を含め、維持費が安いことなどがありますが、いまは燃費などのクルマの性能面がどんどん向上しています。スズキ、ダイハツの争いにホンダが加わり、新車が発売されるたびに燃費性能がアップしているように、競争によって市場が活性化していて、いい効果が生まれています。