中国がマグロ漁本格化したら「死活問題」
とはいえ、2010年8月には大量の中国漁船が尖閣沖に現れ、70隻ほどが領海侵犯したことがある。現状が安心できる状態なわけではなさそうだ。上原さんも、「日本政府には、領土問題は毅然とした態度で臨んでもらいたいというのが大前提」と口にする。たとえ中国が協定にのっとって合法的に操業しているにしろ、その規模の大きさが漁業者にとって脅威となる可能性があるためだ。
まず北緯27度から北の水域。沖縄の漁業者は影響がないとはいえ、日本全体の漁業を考えると、既に中国が漁船の数で圧倒しているうえさらに規模を拡大されれば、国内の漁業は窮地に追い込まれるかもしれない。今以上に「譲歩」するのは、将来を見越した場合に得策とは言えないだろう。
特に沖縄の漁業者がハラハラするのは、現在は大陸棚でとどまっている中国が「南下」してこないかどうかだ。もしも今後中国がマグロはえ縄漁業を本格化させたら、現行の協定では北緯27度より南の海域は「領海侵犯しない限り自由に操業」が認められているのだから、追い払うわけにいかない。しかもこの漁場は現在、台湾との間でトラブルが起きている。日台間では漁業協定が締結されておらず、台湾では近年マグロはえ縄漁が盛んになってきているため、沖縄の漁船との間で漁場を奪い合う格好となっている。このうえ中国漁船までやってくるようになれば、沖縄の漁業者にとっては死活問題となる。