「規制委ショック」が電力各社や原発自治体を襲う 早くも「自民党の政治力」期待する声

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   日本原子力発電敦賀原発(福井県)に続いて、原子力規制委員会が2012年12月26日、東北電力東通原発(青森県)について「敷地内を活断層が走っている可能性が高い」と結論付けたことで、原発を抱える電力各社や自治体側は改めてショックを受けている。

   「活断層の可能性アリ」と科学的に判断された場合、再稼動にブレーキがかかり経営面や地域経済に大きな影響が出るためだ。原発立地の一部自治体からは衆院選に大勝した自民党の「政治力」を期待する声が上がる一方で、規制委側は「どこに政権が移ろうとも安全規制を変更するつもりがない」としている。

「国は何度も審査していたのに」

「専門家が調査したといっても少人数で、時間も限られており議論が不十分だ」
「(原発推進の)国策に協力してきたのに今になって安全性が問題になるとは」。

   東通原発の敷地内にある断層を巡り、原子力規制委が全員一致で「活断層の可能性が高い」との結論を出したことに、東通村の越善靖夫村長は怒りと不満を隠さなかった。今回の結論によって、活断層が動いた場合の原子炉の耐震性評価や補強工事などが東北電力に求められ、再稼動までには相当の期間がかかると見られるからだ。

   立地県である青森県原子力安全対策課もJ-castニュースの取材に対し「安全が何より最優先なので、規制委員会の正式見解を注視していきたい」としながらも、「国はこれまで何度も安全審査を行っていたのに、ここにきてにわかに活断層があるから稼動できないとは」と割り切れない思いを明かした。

   「敷地内の断層は活断層ではない」と主張する東北電力は26日の評価会合で、自説の根拠を挙げて規制委側に対抗したものの、「国際的にも実例がない」「根拠が弱い」と一蹴された。同社は説得力のある再反論はできず、会合後の会見では規制委の島崎邦彦委員長代理から「活断層があるという前提で調査し、影響を調べて欲しい」と注文をつけられた。

   これまでの原発建設に関する国の審査のずさんさを示すように、規制委はすでに日本原電の敦賀原発2号機真下の断層についても12月10日の評価会合で、「活断層の可能性が高い」との結論で全員一致している。こうした科学的判断が覆る可能性は極めて低く、活断層とされる断層が原発直下に位置することから2号機は廃炉となる公算が高くなっている。

   さらに規制委は年の瀬の12月28、29日に国内で唯一稼働中の関西電力大飯原発(福井県)で2回目の現地活断層調査を実施。また年明けには北陸電力志賀原発(石川県)で現地調査する予定で、敦賀と同様に志賀も原発直下に活断層の存在が指摘されているだけに、北陸電力側は戦々恐々なのだという。

「規制委は立場をわきまえろ」

   原子力規制委の科学的判断が電力各社や立地自治体を席巻する中、衆院選で「原発ゼロ」を掲げなかった自民党の大勝を受け、安倍政権の政治力に期待する声もあがっている。

   「規制委員会の各委員は立場をわきまえて事に当たる必要があるのではないか」。石川県の谷本正憲知事は衆院選後の会見で、民主党内の抗争などによって規制委人事が国会の同意を得ていないことを問題視した。

   この発言の背景には、活断層に絡む規制委の科学的判断への批判がある。自民党内部や立地自治体には「規制委員会の現メンバーは民主党政権のもとで選ばれ、今も正式承認されていないのだから人選をやり直すべきだ」との意見も少なくないが、独立性の高い同委員会への政治介入は許されない。規制委の田中俊一委員長は「私たちの判断の根拠は科学であり、政治が何を言ってきても一切関係ない」と強調する。

   選挙で勝利した自民党の原発に関する公約を確認すると、再稼動については「3年以内に結論を出す」、原発を含むエネルギー基本計画については「10年以内に原発や火発、自然エネルギーなどのベストミックスを確立して判断する」としている。原発の新増設を巡っては含みを持たせていた。

   新増設について新たに経産相に就任した茂木敏充氏は27日未明の会見で、全国で12基の計画がある新増設のうち、着工前の9基に関して「今後の大きな政治的課題になっていく」と述べた。建設を認めなかった民主党の方針を白紙に戻し、建設にゴーサインを出すこともあり得るとの意向を明らかにした。建設中の3基については建設継続を認める意向を示した。

   電力の安定供給を最優先課題に据える安倍政権は、原発行政にどう影響力を行使し、再稼動への道筋をどう取り付けていくのか。

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