高橋洋一の自民党ウォッチ
石破幹事長を党内にうまく「幽閉」 組閣・党人事にみる安倍首相の巧妙

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   12月26日(2012年)に安倍晋三首相が指名され、安倍政権がスタートとした。党人事は驚きだった。高村正彦副総裁と石破茂幹事長の留任は想定内として、党総務会長に野田聖子元郵政相、政調会長に高市早苗元沖縄・北方担当相を起用したのはサプライズだった。

   一方、閣僚人事はほぼ事前情報通りだった。両者をみるとかなり「官高党低」だ。筆者はここに安倍首相の狙いがあるとみている。

総務会長と政調会長に女性

   安倍首相は、かつての「お友達内閣」の批判をはね除け、挙党態勢を作る必要がある。と同時に、自らのリーダーシップを発揮して2013年7月の参院選まで経済一本に絞って政策を実行しなければいけない。

   となると、先の総裁選で戦った候補者をどう処遇するかが最大のポイントになる。体調不良療養中の町村信孝氏を除いて、石破茂、石原伸晃、林芳正各氏をどのような役職で配置するかだ。

   石破氏は、今回の総選挙での大勝を受けて幹事長留任。総務会長と政調会長に女性を配置したのは斬新であるが、党の体制として党内を抑える力量は感じられない。「官高党低」の下で、党内有力者である石破幹事長を党内にうまく幽閉した感じだ。

   一方、石原氏と林氏は困難な政策課題である原発、TPPを担当し、それぞれ環境・原子力防災担当相、農水相に就任した。

   もちろん、原発再稼働について、石原環境相は「環境大臣の私が判断する立場にない」と述べ、茂木敏充経済産業相が「原子力規制委員会が安全を確認した原発は、政府の責任で再稼働を決めていきたい」と記者会見で述べたように、独立性の高い三条委員会である原子力規制委員会の判断を尊重し、政府が最終判断する。

かつては「バラマキ」、どうなる新年度予算

   ただ、その過程で石原環境相もいろいろと巻き込まれるのは確実だ。日本原子力発電敦賀原発では2号機建屋直下に活断層があるとする報告書が来年1月にも原子力規制委員会からだされるというので、この扱いがポイントだ。原子力規制委員会は三条委員会であるが、環境省の外局となっており、事務局の原子力規制庁は環境省の内部組織だ。

   また、来年早々には安倍首相の訪米も予定されている。その時までには、TPP交渉参加で一定の結論が必要だろう。総選挙で、農業関係者に対して自民党はTPPへ参加しないという空手形を切りまくった。その後始末は農水相の仕事になる。これはかなり困難が予想される。これまでの自民党のパターンは、予算による大盤振る舞いだ。かつて米開放でも数兆円のバラマキが行われた。2013年度予算、補正予算でどのように扱われるのだろうか、興味津々である。

   いずれにしても、当面のライバルである石破茂、石原伸晃、林芳正各氏を隔離したり、内閣の困難な仕事を割り当てたりして、うまく処遇し、その結果「お友達内閣」の批判も防いでいる。

   ただ、「官高党低」で、石破幹事長の支持者がほとんど入閣せず、党内に押し込められた。官邸主導の経済政策がうまくいけば、そうした不満分子も騒げないが、そうでないと自民党内がざわつき出す。はたしてどちらだろうか。

<編集部より::政権交代に伴い、今回から連載タイトルを「高橋洋一の自民党ウォッチ」と変更しました>


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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