特定の企業に限って出資上限を緩和する新しい案
2012年10月31日の金融審に緩和方針を示した金融庁は、こうした批判を受け、12月5日の金融審の作業部会では、再生企業への100%出資を可能にする案は維持しつつ、全般的な緩和方針をあっさり撤回し、地域経済活性化や雇用維持に貢献する企業に限って出資上限を緩和する新しい案を示した。経営不振に陥ったスキー場を引き取って設備更新などの投資をするリゾート関連企業などへの出資を想定しているという。
金融庁が、あたかも予め考えていたように当初方針を撤回したのは、「そもそもやる気がなかったから」(金融筋)との指摘がある。この話の発端は4月の民主党の成長戦略・経済対策プロジェクトチームが、銀行出資規制の緩和を打ち出したこと。その後、大きな議論にもならぬまま7月末に閣議決定した「日本再生戦略」に盛り込まれた。このため金融庁は、とにもかくにも緩和案をまとめ、金融審に提起したが、ハナから本気ではなかった、というわけだ。民主党政権の崩壊で金融庁の思惑通りの展開になっている。
いずれにせよ、金融円滑化法が3月末で期限切れになるのは変わらない。「銀行は5%ルールを、中小企業支援を渋る口実にしてきた」(政府関係者)との指摘もあるように、倒産激増を防ぐためにいかに銀行の尻を叩くかは、新政権でも大きな課題であるのは間違いない。