紙の呪縛から解放されることが必要だ 電子新聞ザ・デイリー廃刊から学ぶ教訓

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マードックの道楽であり、高い授業料であった

   ザ・デイリーが対象にしたデジタル世代はこのような新聞文化に無縁の人たちだった。だが、そのコンテンツ(レイアウトは別として)は極めて新聞的なものだったので、彼らの感性に訴えられなかったようだ。リストラで編集局が縮小されるとAPなどの通信社電が頻繁に使われ、独自性もなくなった。あまりにも紙の新聞らしい電子新聞になってしまった。ニューズウィーク誌も同様の問題に直面するだろう。今の時代において「週刊誌」に意味があるのだろうか。来年の今ごろには何からの結果が出ているに違いない。

3 三番目の焦点はビジネスモデルである。

   読者の購読料に依存する課金モデルは成功するのだろうか。成功組とされる英「エコノミスト」誌には5万人足らずの電子版有料会員がいるとされるが、同誌はもちろん紙と両立のビジネスモデルである。紙でも電子版でも単体で購読すれば29ドル/3ヶ月だが、両方同時に購読すれば36ドル/3ヶ月の割引になる。印刷版のなかったザ・デイリーには出来なかった選択である。

   電子版だけで行くならば、少人数で機動力のある編集部が、新聞の世界から見れば非常識と思われるようなユニークなニュース発信をしていくことが求められるのだろう。それはベンチャーでこそ実現可能なことで、大企業の傘下では難しいと思われる。この意味でザ・デイリーはマードックの道楽であり、高い授業料であったと言えよう。

石川 幸憲(在米ジャーナリスト)

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