レタスなどの葉物野菜を人工光で栽培する「植物工場」を運営する生産者が「植物工場野菜協会」を設立し、共通ブランド「植物工場やさい」を認定することになった。植物工場で作った野菜は流通量が少ないうえ、一般の認知度が低いため、「共通ブランド化で消費者に存在を知ってもらう」のが目的だ。「植物工場やさい」のロゴの入ったレタスなどは2013年1月中旬以降、全国の市場に出回るという。
異業種の鉄工メーカーなどから進出
植物工場野菜協会を設立したのは、関西鉄工(兵庫県尼崎市)▽スマイルリーフスピカ(富山市)▽ニシケン(東京都港区)▽日本蓄電器工業(東京都福生市)の4社で、いずれも自ら植物工場を手がけ、野菜を出荷している企業だ。一見してわかるように、鉄工会社や電機メーカーなど、農業とは本来関係のない異業種が目立つ。
現在、国内には約200か所程度の植物工場があるが、異業種のメーカーなどからの進出が大半という。工場の建設には鉄工資材や人工光(LED)などが必要で、関連企業が自ら植物工場に進出しているというわけだ。
気密性の高い工場内で人工光を用いて栽培する野菜は、露地栽培と異なり、無農薬で大腸菌や虫などがつかないのが特徴だ。年間を通して安定した供給ができるメリットがあるが、「レタス1個の販売価格が200~250円で、路地ものより3割くらい高いものもある」(同協会)というのが弱点だ。工場建設の初期投資に加え、人工光やエアコンなどの電気代がかかるからだ。
レタス、バジル、サンチュなどが中心
スーパーの店頭に並んだ場合、露地栽培と植物工場の野菜を消費者が区別するのは難しいため、同協会は①収穫時の生菌数②大腸菌の陰性③無農薬栽培④虫の混入がない――ことなどを基準に「植物工場やさい」であることを専門機関を通して認定。共通ブランドのロゴの使用を認める。ロゴの使用は4社でスタートするが、近く7社に増え、来年は20社の認定を目指すという。
植物工場で生産する野菜はレタス、バジル、サンチュなど、水耕栽培できる葉物野菜が中心。果物などの栽培は困難という。消費者に「植物工場やさい」の認知度が高まれば、生産規模の拡大でさらなるコストダウンも期待できる。露地栽培の野菜は天候に左右され、生育しだいで価格が変動するが、植物工場であれば年間を通じて安定した生産が可能で、認知度しだいでは今後とも異業種などからの進出が期待できるという。
植物工場で生産する野菜は、全国の野菜の流通量の5%程度と同協会は説明する。これまでは流通量が少ないうえに、ひと目で植物工場の生産とわからないため、高価格を理由に植物工場の野菜は敬遠されてもおかしくなかった。共通ブランドのロゴマークをつけた野菜がスーパーなどの店頭にどの程度並び、浸透するのか。年明け以降、真価が問われそうだ。