官民の思惑は「同床異夢」の面も
実際、ルネサスの内部からも「半導体の継ぎ目など顧客の細かな要求にまで応えるため、特殊仕様の商品だけが増え、販路が広がらなかった」と非効率経営を問題視する声が聞こえる。製品の価格決定権も「重要顧客」と呼ばれるトヨタなどの大口取引先に握られ、「赤字覚悟で受注することも珍しくなかった」といわれている。
ルネサス再建は、支援機構が来年9月までに1383億円を出資し、株式の69%を持つ筆頭株主となるほか、民間企業からはトヨタ(出資額50億円)、日産自動車(30億円)、ケーヒン(10億円)、デンソー(同)、キヤノン(5億円)、ニコン(同)、パナソニック(同)、安川電機(1.5億円)の8社が計116.5億円を出資する計画だ。
将来的には成長資金に振り向ける500億円の追加出資も予定する支援機構は、ルネサスの再建に失敗すれば投資を回収できず、国民負担につながりかねないとの切迫感で経営立て直しに臨む。一方、株主企業の最大の関心は「重要部品の安定的な供給」だ。「官民連合」による異例の再建スキームは、「日本の基幹技術の海外に流出させてはならない」と意気込む経済産業省も後ろ盾となったが、官と民の思惑は「同床異夢」ともいえる。