日本からの対中直接投資16.2%増 中国市場はまだまだ魅力的?

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   外国企業による中国への直接投資が減っている。中国商務省が2012年12月18日に発表した11月の対中直接投資の実行額は、前年同月に比べて5.4%減の82億9000万ドル(約6950億円)。6か月連続でマイナスとなった。

   海外からの投資が経済成長をけん引してきた中国にとって、大きな痛手になりそうだ。ただ、日本からの投資は増え続けている。

12年1~11月累計で前年同期比11.3%増

   外国企業の対中直接投資が減少している背景には、世界的な景気の先行きへの不透明感がある。なかでも、「震源地」の欧州企業は財務の悪化から投資を控えざるを得なくなった。

   加えて、中国では人件費の高騰や消費の伸び悩みなどの問題が浮上。日本にとっては、9月に起こった尖閣問題をきっかけとした大規模な反日デモの影響もある。これらを契機に外国企業に対中投資を見直す動きが広がってきた。

   ところが、2012年11月の日本からの直接投資は、前年同月比16.2%増の5億3000万ドル(約440億円)と2か月ぶりにプラスに転じた。反日デモの影響が薄らいだことで、それ以前に決定していた投資案件が実行されたようだ。

   東日本大震災以降、部品などのサプライチェーンの寸断で日系企業は中国に生産拠点を移す動きが活発になった。欧米が対中投資を控えるなかで、日系企業の投資は欧州の債務危機の懸念が広がった8月を除き、高い水準を維持していた。

   日本からの投資は12年1~11月累計で前年同期比11.3%増の66億1000万ドル(約5490億円)。同じ時期に50%増を記録した11年に比べると鈍化がみられるとはいえ、「中国のマーケットの巨大さと地理的な近さもあって、日本企業の中国指向は今のところ他国と比べて相対的に高い状態にある」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング・国際マネーフローレポート11月14日号)としている。

   ただ、「対中投資の実行額に反日デモ後の承認案件が反映されるのはこれから」(日本貿易振興機構・海外調査部)なので、投資が減速する可能性がないとはいえない。

対中投資の減少は「一時的なこと」?

   日本貿易振興機構(JETRO)がアジア・オセアニア地域に進出している8106社の日系企業を対象に行った実態調査(10~11月実施、3819社が回答)によると、今後1~2年に中国で「事業を拡大する」と回答した企業は、52.3%。前年の調査に比べて14.5ポイント少ないことがわかった。2002年の調査開始以来、50%台に落ち込んだのは初めてだ。

   業種別にみると、反日デモで店舗が破壊されたり不買運動の影響を受けたりした卸売・小売業が前年に比べて20ポイント以上も低下。自動車など輸送機械も10ポイント以上低下した。日中関係の悪化を受けて、新規投資に慎重な姿勢がみてとれる。

   一方で、中国での事業を「縮小・撤退」すると答えた企業は、前年比で1.4ポイント増えたが、5.8%にとどまった。

   こうした結果に、JETRO海外調査部の日向裕弥・中国北アジア課長代理は「企業の多くは事業を拡大しないまでも、現状維持と答えています。中国市場はなお魅力的で、ここであきらめずにやっていこうという企業は少なくありません」と分析している。

   対中直接投資の減少を、「一時的なこと」と見る向きは少なくないようだ。

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