ペニーオークション(ペニオク)を巡る詐欺事件に絡み、一部のタレントが商品を安値で落札したというウソを自らのブログに記していた問題は、ワイドショーなどでも取り上げられ、芸能界を揺るがす大騒動となっている。
問題の背景として、ファンとの交流や情報発信を目的にした芸能人ブログが、いつのまにか広告媒体に変容してしまったことが指摘されている。タレントの「ブログ広告料金ランキング表」まで存在するというのだ。
ランキング上位はママタレが独占
1位は「今年出産した元グラビアアイドル」のY・Oと、「アイドルグループ出身のママタレ」のN・Tで定価350万円、2位は「モデル出身のタレントで2児の母」のA・H、「モデル出身のセレブタレント」のU・Kらで定価300万円――。
タレントやモデルのブログ広告の価値をランキング付けしたリスト表を報じたのは、2012年12月18日発売の写真週刊誌「フラッシュ」だ。同誌によると、この資料は広告代理店が作成したもので、今年上半期段階での順位という。
ここでの広告とは、普通の記事を装ったステルスマーケティング(ステマ)という種類の「一見、広告とは分かりにくい広告」を指す。大幅な値引きもあるとはいえ、タレントが「某社のダイエットグッズや美容品を愛用している」といったステマ記事を書くだけで、楽に稼げる実においしい商売なのだ。
記事には実際に女性タレントに200万円払ってブログを書いてもらったという通販会社社長のコメントも付いている。
「商品の記事が画面に出るのはたった1日ですが、この時は1週間で600万円の売り上げで十分に元は取れました」
女性タレントやモデルによる女性ファンへの影響力は相当に強いようで、リスト掲載の41人の大半は女性たち。前出のランキングは、そのタレントたちがステマ記事を書くか書かないは別にして、ブログの閲覧回数や読者の男女比などを徹底分析して、PR効果を数値化したものだという。
謝罪タレントのほぼ全員がアメーバブログ
またステマとは微妙に異なるものの、アメーバブログを運営するサイバーエージェント社によって、タレントブログ上での商品紹介はすでにオモテのビジネスとして確立されている。「Ameba芸能人・有名人ブログ記事マッチ」で、売り込みのキャッチコピーは「認知拡大、ユーザー誘引、ブランドロイヤリティの向上効果は、1つのメディアに匹敵するほど」となっている。
「芸能人・有名人ブログ記事マッチ」はアメーバブログの人気芸能人ブロガーに商品を提供してブログで紹介してもらう仕組み。掲載料はタレントによって異なるものの1記事で40万円~400万円となっている。高い宣伝効果が期待できる「オススメ業種」として、飲料・食料品、美容・コスメ、エンタメ・サービス関連を挙げている。
ステマとの大きな違いは、実施条件に「関係性の明示」があることぐらいだ。「この商品はスポンサーからの提供です」と、はっきり書いてくれれば読む側には分かりやすいが、必ずしもそういうケースばかりではなさそうだ。
こうした中、今回の架空の落札記事の問題は、その知名度ゆえにタレントブログが、野放図に悪用される危険性を示している。「ウソの落札話を書いてしまった」と謝罪したタレントのほぼ全員がアメーバブログ上に自分のブログを開いていることから、本人も事務所もいつもの「記事マッチ」と同じような感覚でペニオクを推薦したという推測も成り立つ。
サイバーエージェントにも問題発覚後、ペニオクとの関連についての問い合わせが殺到したという。同社は「一切関与していない」と回答しており、同社を介さずに独自の判断でタレントブログ上で商品紹介するケースについては関知できないとしている。