震災の影響で仕事が激減した施設
AARは、東日本大震災で被災した障害者・高齢者施設の修繕や整備をし、これまで約60施設の活動再開を支援してきました。障害者施設では、障害があるために企業などでの就労が困難な方々が働いたり、就労訓練を受けたりしています。仕事の内容は、加工食品や工芸品などの製造・販売、飲食店の運営、企業から委託を受けた袋詰等の軽作業など、施設によってさまざまです。利用者はそれぞれの適性に応じて作業を行い、工賃を得ています。しかし、震災で商品の販売先や作業の発注元企業が被災してしまい、仕事が激減しました。活動を再開できる状況が整っても利用者の仕事がなかったり、仕事が少ないために小額の工賃しか支払われていない状態が続いている施設が少なくありません。AARは2011年秋より、仕事の確保や商品の販路拡大といった支援も行っています。
ひとりでも多くが作業に従事できるよう、さまざまな取り組みを行っています
岩手、宮城の約20の施設で、民間企業からの業務委託の仲介や、業務に使用する資器材の提供などの支援を行っています。「ワークフォローおおつち」(岩手県大槌町)は、地元大槌町の水産会社から、茎わかめの剣山作業(細かくする作業)を委託されていましたが、震災で作業所が流失してしまいました。利用者の方々は仕事を絶たれたまま自宅待機となっていました。施設からの相談を受けたAARは、2012年4月、新しい作業所の設置を支援しました。現在、新規採用も含め6名の利用者が茎わかめの剣山作業に従事しています。25年前からこの作業を行っている三浦さんは、「またこの仕事に戻れて嬉しい。働いた分に応じて工賃が増えるので、やりがいもあります」と笑顔を見せてくれました。「ワークフォローおおつち」所長の蛇口さんは「新しくこの作業を始めた利用者も、仕事に意欲を見せ、いきいきしている」と話してくださいました。
また、障害のある方々を雇用し、豆腐や豆乳製品などの製造、店舗での販売を行っている株式会社まちの豆腐屋プロジェクト(宮城県涌谷町)には、障害者の雇用拡大のため、販売用の車両やリヤカーを提供しました。さらに製品の品質を高めるため、専門家を派遣し利用者と職員を対象に品質管理指導も行いました。この会社では現在約30名の障害者が働いています。AARが提供したリヤカーを使った近隣への移動販売は、外出の機会が少ない高齢の方の話し相手にもなっていると、大変好評です。障害者の活動が地域に根差す一助となっています。
企業のみなさまにもご協力いただいています
この活動は、さまざまな企業のみなさまにもご協力をいただいています。株式会社根菜倶楽部(茨城県古河市)は、同社が販売する野菜栽培キットの袋詰めや梱包作業を、被災した4施設に委託してくださいました。また、経営コンサルティング、テクノロジー・サービス、アウトソーシング・サービスを提供するグローバル企業のアクセンチュア株式会社は、企業市民活動にも積極的に取り組んでおり、2006年よりAARの障がい者支援や地雷・不発弾対策にご支援くださっているほか、東日本大震災直後から資金面での支援に加え、社員の方々が東京・東北事務所でプロボノ活動(職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献する無償の業務派遣)を行ってくださっています。その活動の内容はITによる支援(支援物資の集配管理システムの構築)、経営コンサルティング(福祉施設の事業評価や改善アドバイス、施設が販売する商品の販路の拡大や営業活動へのアドバイス、イベントの企画)など、多岐にわたります。
(AAR盛岡事務所 馬場路子)
AAR Japan[難民を助ける会]
1979年、インドシナ難民を支援するために、政治・思想・宗教に偏らない市民団体として日本で設立された国際NGOです。
2011年3月11日に発生した東日本大震災を受けて、地震発生当日より活動を開始。宮城県仙台市と岩手県盛岡市に事務所を構え、緊急・復興支援を行っています。
活動にあたっては、特に支援から取り残されがちな障害者や高齢者、在宅避難者、離島の住民などを重点的に支援しています。食料や家電などの物資の配布、炊き出し、医師と看護師による巡回診療など、多面的な活動を続けています。
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