東京・渋谷駅前で、こんな声を耳にした。
「あー、そういや今日って選挙だったっけ」
つぶやいた青年の視線の先にあったのは、渋谷のシンボル・ハチ公像だ。衆議院総選挙投開票日の2012年12月16日、いつものように街を見下ろすハチ公の身体には、選挙への参加を促すたすきが、ややずれ気味にかかっていた。
「若者の政治離れ」が叫ばれて久しいが、本当に若者は政治に興味がないのか。ないとすればなぜなのか。J-CASTニュースでは若者たちの生の声を聞くため、選挙当日の渋谷で街頭アンケートをした。
「投票したかった!」と嘆く10代も
16日午後、渋谷の街は日曜日とあって、多くの人でごった返した。街頭ビジョンにはアイドル歌手のプロモーションビデオが流れ、道路には大音量の宣伝トラックが行き交う。メディアはすっかり選挙一色、それ以外の話題などない、といわんばかりのムードだが、少なくともこの渋谷には、そんな空気はほとんど感じられない。
そんな中、アンケートに足を止めてくれたのは20代の若者30人。
最初の質問は、
「あなたは選挙に行きましたか? あるいは行く予定ですか?」。
若者の投票率は、他の世代に比べてかなり低い。前回、2009年の総選挙では、全体平均の69%より20ポイントも下回った。当然、このアンケートでも「行かない」という答えが多いのでは――と思ったのだが、意外にも「行く」「行った」という答えが多数を占めた。選挙権を持つ20代以上では、実に7割が「行く」「行った」と回答した。選挙権を持たない10代でも意識が高い人は少なくなく、ある10代の男子学生は、
「ぜひ投票したかった! 参加できず切ない……」
と悔しい胸のうちを語ってくれた。
各党の政権公約(マニフェスト)を見たか、という質問にも、66%の人が「見た」と答えた。特に投票に行った人では、8割がちゃんと政権公約をチェックしていた。これを見る限り、関心は決して低くない。
もちろん、アンケートに答えた人は、ある程度政治に興味があるはずだ。実際、アンケートを頼んでも、書かれた「選挙」の2文字を見るや、嫌な顔をして去っていった人も多い。
むしろ疑問なのは、若者でも選挙への参加に熱心な人がこれだけいるにもかかわらず、そのムードがなぜ全体に広がらないのか、という点だ。
周囲と「政治の話をする」は半数に留まる
それを読み解くヒントが、若者たちの「選挙に行った理由」から見えてくる。自由回答を含むいくつかの選択肢から選んでもらったのだが、圧倒的に多かったのは「義務だと思ったから」。9割近くの人がこの答えを選び、逆に「政治を変えたい」「応援している候補や政党がある」といった積極的な理由はごくごく少数に留まった。
また「政治の話を友達とするか」という問いには、投票した人、しなかった人を問わずほぼ半数が「NO」。つまり、
「選挙に『行かなきゃ』とは感じているけれど、周りに対してそれを強く主張する、あるいは議論しよう、とまでは思わない」
というのが、今の若者の実態らしい。
若者の政治参加をめぐる議論では、「有権者としての義務」「投票しなければならない・すべき」といった論が多い。こうした論調が影響しているかもしれない。