歴史的な日が「大衆メディア文化でめちゃくちゃに」
米航空宇宙局(NASA)には数千件の問い合わせが寄せられているという。NASAの担当者は「11歳の子どもからも質問が送られてくる。世界が滅ぶのならいっそ死んでしまいたい、との声すらある」と話しているという。さらに公式サイトで、惑星衝突による地球滅亡説を打ち消した。
この説が初めて登場したのは1995年で、ある女性が「お告げを受けた」として自身のサイトで紹介したのだという。その後、この女性の説を支持する人たちが、「ニビル」と名付けられた未確認惑星の地球衝突を、マヤの長期暦が一巡する2012年12月21日に起こるとの持論を唱えたとしている。
それにしてもなぜ、マヤ暦と世界の滅亡が結びつけられたのか。前出の中村教授は、ふたつの説を挙げた。ひとつは、マヤの遺跡に刻まれた碑文を何らかの予言だと勘違いしたというもの。もうひとつは、スペイン人がマヤ文明を滅ぼした16世紀以降、それまでユカタン半島北部の村々に伝承されていた「チラムバラムの書」に「2012年の予言」が書かれていると、これまた勘違いされ、伝えられたとの説だ。
16世紀には既に長期暦は使われておらず、約256年で1サイクルとなる「短期暦」に代わっていた。「チラムバラムの書」には、短期暦のある特定の周期に有力な都市が滅ぶなどの言い伝えが書かれているのだが、これを長期暦が完了する12月21日と強引に結び付けて誤った解釈をしているのだという。
マヤの研究者からは、「5000年に1度」という歴史的な日が「根拠の薄い人類滅亡説」に結び付けられたと嘆く声も上がっている。米国立アメリカ・インディアン博物館で副館長を務めるホセ・バレイロ氏は米ブログメディア「ハフィントンポスト」に11月28日、「世界は終わりを迎えない」との題名で寄稿。マヤの記念すべき日が、映画「2012」のような「大衆メディア文化によってめちゃくちゃにされつつある」と批判した。
映画では、津波がニューヨークなどを飲み込むような災厄が起こる日として描かれていると指摘し、ある企業は「マヤ暦は世界の終わりを予言している」という「ウソの広告」を流したとする。続けてバレイロ氏は、「現地に住む600万人の『マヤ人』のことを考えると、あまりにもひどい」としている。