自衛隊、中国領空侵犯探知なぜできぬ 「レーダー死角」解消策は2年前から「検討」

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   沖縄県の尖閣諸島の魚釣島近くの領空を、中国国家海洋局の航空機が領空侵犯した。中国機が領空侵犯するのは初めてだが、日本政府がそれを知ったのは海上保安庁からの通報で、自衛隊のレーダーでは探知することができなかった。

   この問題の解決策は、遅くとも2010年には指摘されていたが、有効な対策を打てていなかったとの指摘も出そうだ。

4分間にわたって領空を侵犯

領空侵犯した中国機。宮古島のレーダーからは探知できなかった(海上保安庁撮影)
領空侵犯した中国機。宮古島のレーダーからは探知できなかった(海上保安庁撮影)

   政府の発表によると、海上保安庁の巡視船が2012年12月13日11時6分頃、中国のプロペラ機1機の領空侵犯を確認し、無線で領空外に出るように求めた。4分後の11時10分頃、領空外に飛び去ったという。航空自衛隊では海保からの連絡を受けてF15戦闘機8機とE2C早期警戒機1機を現場に向かわせたが、現場に着いた時には、すでに飛び去っていた。

   自衛隊の岩崎茂統合幕僚長は、同日午後の会見で、

「自衛隊のレーダーで捕捉はされていない」

と、領空侵犯を確認できなかったことを認めた上で、今後の対応については、

「できるだけAWCAS(早期警戒管制機)、E2C等を使った補完をしていかなければならない」

と、レーダーを搭載した飛行機の活用が重要だとした。

   藤村修官房長官も、12月14日の会見で、

「尖閣は、地上固定レーダーが設置されている沖縄本島や久米島、宮古島からは相当の距離、遠隔地にあり、これらの地上レーダーによる探知は、航空機の高度などによって困難さがある」

と話し、AWCASやE2Cを活用して「防空に万全を期していきたい」と述べた。

1976年には「レーダーの死角」原因でソ連の軍人が亡命

   日本最西端の固定レーダーは宮古島に設置されているが、尖閣諸島からは210キロメートルも離れている。地球は丸い上にレーダーの電波は直進性があるため、低い高度で飛行機が侵入して来た場合、レーダーからすれば水平線の下に潜り込む形で「死角」となってしまう。これが、藤村氏の言う「探知の困難さ」だ。

   実は、同様の問題は、冷戦期の1976年にソ連(当時)のミグ25型戦闘機が函館空港に強行着陸した「ベレンコ中尉亡命事件」でも指摘されており、この事件をきっかけに導入されたのがE2Cだ。E2Cは、超低空を飛ぶ飛行機でも、数百キロ離れた上空から探知できるとされる。

   2010年には、航空自衛隊三沢基地(青森県)に配備しているE2Cの一部を空自那覇基地(那覇市)で展開させる方針が固まっており、当時の新聞も、

「警戒機展開、南西諸島も 防衛省検討、レーダー死角補う」(10年10月6日、朝日新聞)

などと報じていた。

   だが、この時の方針から有効な対策を打つことができないまま、領空侵犯を許してしまった形だ。

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