コンクリートの品質が東京五輪を境に低下
コンクリートは基本的に砂や砂利の「骨材」に、水とセメントを混ぜてつくられる。セメントに対する水の比率が違っても硬化するが、水が多いほど強度は低い。またコンクリートは、二酸化炭素によって劣化が進む。中の鉄筋が腐食し、最終的にはコンクリート構造物を崩壊へと導く。
小林氏は調査の結果、道路の橋梁やマンションといったコンクリート建造物の品質が、東京五輪の開かれた1964年を境に変わり、それ以降に建設されたものの寿命が短くなっていると指摘する。
例えば1970~75年に建設された山陽新幹線の場合、コンクリートの材料に海砂が使われた。塩分が含まれているため鉄筋の腐食が早まり、コンクリートの劣化が進むとする。この問題は1983年にNHKで特集されたが、当時の国鉄の担当者は否定していた。さらに、旧日本道路公団が実施した品質調査によると、東名高速道路が開通した1969年までに使われたコンクリートに比べて、1972年以降のものは、砂量が4%、水量が6%増加していた。
小林氏によると、東京五輪後のコンクリートは、良質な骨材が枯渇したためにアルカリ反応性の砕石や多くの塩分を含む海砂などが使われるようになった。海砂は塩分が問題なだけでなく、物理的性質そのものが劣り吸水性が大きいため、多くの水を加えなければならず、必然的にコンクリートの品質が低下するわけだ。
「コンクリートが危ない」の中には、トンネルに特化した議論は見当たらない。だが、笹子トンネルが開通したのは1977年と東京五輪「後」だ。一方、国交省の調査で不具合が見つかった14か所のうち、首都高・羽田トンネルが東京五輪と同じ年、コンクリートのひび割れが見つかった恵那山トンネルは1975年で他のトンネルも東京五輪より前の開通はなかった。これらのトンネルに低品質のコンクリートが使われているとは必ずしも言えないが、検査をすればするほど「異常」が見つかるだけに安心できないのも確かだ。